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『志村けんのだいじょうぶだぁ』神回で目撃した“ドリフの流儀” 最後の「4人集合」は最高の一言で終わっていた

『志村けんのだいじょうぶだぁ』神回で目撃した“ドリフの流儀” 最後の「4人集合」は最高の一言で終わっていた

ドリフの笑いには「毒」があった

2020/05/03
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ドリフの笑いには「毒」があった

 ドリフは名実ともに伝説的なグループであり、あまりにも熱狂的に支持されていたために、後世の評価が追いついていない部分があるような気がする。志村が亡くなった後、ドリフや志村のコントが万人受けする健全な笑いであるかのように語られることもあったが、実態はそんな単純なものではなかった。

 むしろ、まともな大人だったら眉をひそめ、自分の子供には絶対に見せたくないと思うような過激な下ネタ、暴力ネタ、差別ネタもふんだんに盛り込まれていた。

 この特番ではそういったドリフの「毒」の部分が見られたのが良かった。「死んだ人のことを悪く言ってはいけない」などという生ぬるい常識はレジェンドたちには通用しない。笑いながら仲間を罵倒して見送るのが彼らの流儀なのだ。

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『8時だョ!全員集合』の一コマ ©共同通信社

加藤茶が志村けんに送った言葉

 昨今流行りの「優しいお笑い」という言葉に個人的に引っかかりを感じてしまうのは、そもそもお笑いという営み自体が優しいに決まっているだろ、と思うからだ。いかりやのベースが下手だと笑う加藤は優しくないのか? いや、もちろん優しいのだ。

 先日放送された志村の追悼特番でも、加藤は弔辞の中で志村に対して「お前はバカだよ」と述べていた。前後の文脈としては、一緒にやらなきゃいけないことがたくさんあったのに1人で先に天国に行ってしまうなんて、という意味だった。

 志村亡き後、ふとあの番組のことを思い出すことがある。あれはひょっとすると、ドリフの4人がテレビで顔を合わせた最後の機会だったのではないか。そんな貴重な場で、大の大人たちが故人の悪口でさんざん盛り上がり、「でも、いい人だったよね」みたいなフォローも一切なかった。志村さん、ドリフの皆さん、やっぱりあなたたちは最高のバカだよ。

©文藝春秋
『志村けんのだいじょうぶだぁ』神回で目撃した“ドリフの流儀” 最後の「4人集合」は最高の一言で終わっていた

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