スカートを引きずり下ろす“堂々たるセクハラギャグ”
この番組で演じたコントの中でも加藤は実に生き生きとしていた。往年の歌舞伎芸やくしゃみ芸も健在。加藤がボケ、志村がツッコミを担当するドラマ撮影のコントでは、段取りを間違えた加藤が「久しぶりなもんですから」と笑った。加藤が患者、志村が医者を演じるコントでは、加藤がくしゃみと一緒にナースのスカートを引きずり下ろす一幕もあった。もはや「志村けんのコント番組」という聖域以外では今どき見られなくなった堂々たるセクハラギャグである。
一方、寝台車のコントでは、おばあさん役の志村がボケで、加藤がツッコミに回っていた。ツッコミの言葉にもキレがあって、『鶴瓶の家族に乾杯』のときのような不安定さは微塵も感じられない。
番組は“意外な一言”で締めくくられた
最後のトークコーナーでも、メンバーのいかりやに対する不平不満が止まらない。楽器の練習中にいかりやが加藤に指示を出したところ、加藤は小声で「(じゃあお前が)やってみろよ」とつぶやいたそうだ。加藤いわく、いかりやは他人に厳しく言うばかりで、自分では何もしない。そして、挙げ句の果てに加藤はこう言い放った。
「ベースだって大した弾き手じゃないんだから」
この一言で番組は締めくくられた。最初から最後まで故人の罵倒一色。うーん、面白い。ドリフはずっとコント中心の活動を続けていたので、こうやってメンバーだけが揃ってじっくりトークするのを見る機会はほとんどなかった。
平均年齢70歳超の彼らの口から飛び出したのは、リーダーのいかりやに対する不平不満のみ。いかりやがコントの中で「権力者」だったのは、今で言うところの「キャラ」なんかではなく、正真正銘の本物だったのだ。
もちろん、いかりやを擁護する立場で言えば、ドリフのメンバーという稀代の悪ガキたちを統率するためには、絶対的な権力者として振る舞うしかなかったのだろう。