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停電、火事、トイレ崩壊……生放送中の大事故でもコントを続けた志村けんさんの“人間力”

2021/04/04

genre : エンタメ, 芸能

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長さんのアドリブ「8時9分半だョ! 全員集合!!」

 志村さん、仲本さんが「どうしたの?」とツッコみ、「今日は……休みか?」と加トちゃん。「15年間やっておりますが、こういうアクシデントは初めてでございます」との長さんの理路整然とした説明に、リーダーとして、“大人”としての貫禄を感じたり。懐中電灯で自分の顔を照らす志村さんに「遊んでんじゃないよお前は。大変な事態なんだから」とツッコむ長さん。これは会場を和ませようとする志村さんの心遣いだろう。

©文藝春秋

 暗がりの中、懐中電灯を手に当日のゲストを紹介する長さんはどこまでも頼もしい。「西城君でございます」と西城秀樹さんを紹介。直後、会場からは「ヒデキ~~!」のシュプレヒコールが。ファンも逞しい。続いて河合奈保子さん、オレンジ・シスターズさん、菊池桃子さんとゲスト紹介。やがてスポットライトや補助照明を駆使し、長さんのアドリブが利いた「8時9分半だョ! 全員集合!!」の雄叫びとともに番組は再開。あくまでも補助電源なため、どこか薄暗い印象を受けつつもどうにか生放送は終了した。エンディング直前、「また来週も(停電で)!」とアドリブを入れ、さらに長さんに「目が赤いよ、どうしたの?」とツッコむ志村さん。もちろん志村さん一流のギャグだが、後者は半分、駆け回っていた長さんを労う心遣いも込めてのことだろう。

“お約束”のコントのつもりが……トイレが志村さんに崩れ落ちる大事故

 これぞ志村さんにとっての最大のハプニングと言えるのが1983年6月4日放送の「ドリフの民宿・これじゃ明日も満員御礼」。加トちゃんと志村さんが田舎で民宿を営む老夫婦に扮して、東京から来た長さん、仲本さん、高木ブーさんファミリーをもてなすという設定。加トちゃんのはげヅラ爺さんが、建てつけの悪いフスマを勢いよく閉めると、その反動(?)で、婆さんが入っていたトイレが傾いて(もしくは志村さんだけが外に飛び出す予定だった?)大騒ぎという、ある意味“お約束”のコントだったが、なんと! 飛び出した志村さんの上に、トイレのセットが音を立てて崩れ落ちたのだ。

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 加トちゃんと高木さんに助け出されるや、頭と腰をさすりつつものすごく俊敏な動きで飛び出す志村婆さん。すかさず「あれまで落ちる予定じゃなかったでしょ!?」、「後ろからドーン!」と、愚痴ともつかぬアドリブを連発。「『全員集合』始まって以来の死人が出たかなと思ってまぁ」という加トちゃんに思いっきり当て身を喰らわす志村さんの姿に、我々もようやく「ほっ」。「なんか全部忘れちゃった俺。次はなんだっけ? もう今日帰ろう。なんか嫌な予感してきたオレ」、そして「1+1は3、あ、大丈夫だ!」という見事なアドリブでコントは無事再開。アドリブとギャグで混乱した自身の頭を整理し、且つ会場や視聴者も和ませる志村さんに、子供ながら一流の“芸人魂”を見出した。