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体力面に加え、移住者ならではの苦労もあったようだ。別の近隣の高齢女性はこう語っている。
「この近辺で移住者は木本さんともう一組ぐらいで、あとは元々住んでいた高齢者ばっかり。山間の村で坂道も多くてね、ゴミ出しに行くだけでもしんどい、と家を出たがらない老人が多いんですよ。年に数回ある村共同の草刈りがある時期には私らの子供世代が都会から帰ってくるから、木本さんご夫婦も交流を深めるため参加していたようです。
でもそれ以外で継続的なご近所付き合いはほとんどありませんでした。すぐ近くに住んでいても、木本さんとは回覧板の付き合いくらいしかありませんでしたから。顔と名前は知っていても、本当に交流があった近隣住民は数人しかいないと思います」
「木本さんは1対1で子育てをするしかなかった」
木本家には「車が好きそうな、旦那さんのお仲間がよく訪ねてきていましたよ」(前出・近隣住民)というが、木本容疑者の友人らしき訪問者を見かけた人はいなかった。
「加東市は育児や教育に力を入れてはいるみたいだけど、なにぶん広い土地ですから。子供を遊ばせる場所も車で出かけなければ、近隣の小学校の校庭くらいしかない。木本さんも1対1で子育てをするしかなかったんじゃないかな。移住したての頃は楽しかったかもしれませんが、その後は孤独を感じていたと思います」(別の近隣住民)
加東市役所の福祉総務課に問い合わせたが、「相談などはなかった」と話している。
木本家の車庫には「BABY IN CAR」と書かれたスヌーピーのステッカーが張られた車が停まっていた。思い描いた田舎ライフの代償は、あまりに大きい。