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眼病、天然痘、皇位継承
ところで、清朝の世祖・順治帝は6歳で即位したものの、当時猛威を振るっていた天然痘に罹患して24歳の若さで崩御した。彼の子で男系の子孫を残した記録が確かなのは、裕親王福全・康煕帝(玄燁)・恭親王常寧の3人だ。康煕帝は皇帝なので除外すると、アイ先生のご先祖は福全か常寧だった可能性がある。
仮に福全だった場合は興味深い。なぜなら兄である彼が皇位を継承せず、弟の玄燁が康熙帝として即位した主たる理由は、伝承によればふたつ。すなわち、福全の片目が不自由だったことと、幼少期に天然痘の罹患歴を持つ玄燁が感染症の免疫を獲得していたことだとされているのだ。
眼病と天然痘による皇位継承劇から約360年後、中国発のコロナ禍のなかでアイ先生が眼科医院の院長を務めているのも、なにかの縁かもしれない。最後に眼科の視点からのコロナ対策についても尋ねてみた。
「目は粘膜ですからバリアが弱いんですね。目からの新型コロナウイルス感染を防ぐために、手洗いの徹底と、目の周囲を手で触らないことが重要です。私は目がかゆいときは、必ずティッシュを使って触るようにしています」
「ウイルスの数にもよりますが、飛沫が目に入ることによる感染は普通に起こり得ることです。状況によっては、マスクに加えて目をガードする予防策も意識してみてくださいね」
目の病気と感染症は、ときとして皇位継承問題にすら影響をおよぼし、世界史を塗り替えることがある。読者各位もよく注意していただきたい。