2021年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。国際部門の第5位は、こちら!(初公開日 2021年1月1日)。
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2005年にイギリスの大手コンドームメーカー・Durex社がおこなった世界規模の性生活調査では、対象41ヵ国中最下位だった中国人の性生活満足度。しかし、劇的な経済発展とともに中国人の価値観やライフスタイルは大きな変化を遂げ、性生活事情も大幅にアクティブに変わった。
また、中国では、蒼井そらをはじめとした日本人のセクシー女優が人気を博したことも記憶に新しい。昨今は、日本人セクシー女優の愛人契約、枕営業、さらに日本を対象にした買春ツアーの企画まで噂されているが……。中国事情に精通するルポライター安田峰俊氏による著書『性と欲望の中国』を引用し、中国の「性」の実情を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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中国のイベントに呼ばれる日本人AV女優
やがて、蒼井そら人気に引っ張られる形で、中国では日本のAV女優ブームが広がった。それ以前からセックスエキスポなどに日本のAV女優を招致する動きはあったが、この流れがいっそう過熱し、景気のいいIT企業が自社のイベントにAV女優を登壇させる例もしばしば見られるようになった。
中国でのイベントに女優を派遣している、日本側のあるAV業界関係者は詳細をこう明かす。「イベント1回のギャラは、女優の知名度やイベント規模にもよりますが20万~400万円程度。ただ、蒼井そら並みの有名人でもない限り、数百万円規模の例はめったになく、多くの場合は100万円以内です。移動日を入れて、女優の拘束期間は3日くらいですね」
日本から中国へ渡航する旅費や滞在費は、中国側の興行主が別途負担する。イベントに登壇する女優の取り分は「ギャラの総額の4~7割ほど」だ。一定以上の知名度がある女優なら、3日間で50万円くらいの稼ぎにはなるだろう。
行き当たりばったりのスケジュール進行
中国でのイベント登壇は、日本でAVに出演するよりも精神的・身体的な負担が少なく、ラクに稼げる仕事のようにも思える。だが、海外慣れしていない女優の場合は中国の大気汚染の深刻さや水・食事が合わないことにストレスを感じ、イベント出演を拒否する人も少なくないという。「それ以上に困るのが、中国では行き当たりばったりのスケジュール進行が多いこと。日程や会場が突然変更されたり、会場に行ってから事前に聞いていなかった記者会見がセッティングされていたりします」
中国では興行主の事情以外に、党の高官が街を訪問するといった政治がらみの事情でイベント開催が中止されることも日常茶飯事である。上海のセックスエキスポが、習近平の上海視察とバッティングしたことで、開催数週間前にいきなり日程と場所が変更されたことは第四章でも述べた。蒼井そらもこう言う。「1週間前にイベント開催が決まって、会場入りしてメイクをしてから『開始3時間前に中止』みたいなこともざらにあります。これは慣れが必要だと言うしかないですね」
中国でのイベント出演は、たとえばギャラの半額を興行主に前払いさせておくなど、突然のキャンセルや日程変更を織り込み済みでマネジメントがおこなわれる例が多いという。