東京タワー、浅草寺、皇居、両国国技館……。日本の首都・東京には数多くの名所が存在する。
そんな中から、知名度にとらわれず、東京の「多様性」「歴史の多層性」に着眼し、よりよく楽しむための「視点」を紹介した一冊が、ライター・編集者の岡部敬史氏による『見つける東京』(東京書籍)だ。ここでは同書の一部を抜粋。写真とともに、意外と知らない東京の魅力的なスポットを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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神宮外苑で「国会議事堂?」と思うのは「聖徳記念絵画館」。
イチョウ並木で名高い神宮外苑(正式名称「明治神宮外苑」)を歩いていると「あれ国会議事堂?」と思う建物が目に入る。
実際、そう勘違いしている人もいるが、これは「聖徳記念絵画館」である。明治天皇が崩御されたのち、内苑となる明治神宮と外苑となる神宮外苑が造られたが、この外苑の中心施設として建造されたのがこの絵画館。館内には、幕末から明治の終わりまでを、明治天皇の生涯を軸として描かれた80点の巨大壁画が飾られており、誰でも見学することができる。建物が完成したのは1926年(大正15年)で、建物の設計図図案は公募され集まった156点から1等図案を参考に造られた。
一方、国会議事堂の建物が完成したのは1936年(昭和11年)。こちらも建物の図案が公募されたが、完成したのはその当選図案とは大きく異なり、誰が設計したかは特定されていないという。どちらも左右対称の建造物であるが、大きく異なるのは中央の塔の部分、聖徳記念絵画館はドーム型であるのに対して、国会議事堂はピラミッド型になっている。