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BE:FIRSTは本当に世界を目指せる? 日本がK-POPに“勝てない”ワケから考えると…《MVは4日で500万再生超え》

2021/08/25
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 確かにカラオケで歌いたくなるのは「エモい」曲だろう。情感を込めて歌い上げると様になるからだ。一方、お洒落なクラブで流す曲は洗練されている必要があろう。

 また、日本は音楽市場がそれなりに規模が大きく、そのため、国内向けの音楽商品を作ればビジネスは成り立つ。「アメリカで売ろう」と冒険するよりは、手堅く日本国内向けの音楽を作っていた方が安定するわけだ。しかし、K-POPの隆盛をみていれば、日本の音楽業界も海外を意識したくなる。

「ジャニーズもSnow ManやSixTONESは歌やダンスのレベルが高いメンバーをそろえ、K-POPや洋楽を意識しています。海外で売っていきたいという意向があると思います」(エンタメ雑誌編集者)

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AAAも完成度の高いグループだったが……

 この日本とアメリカの文化の違いをSKY-HIは理解しているはずだ。海外(アメリカ)でヒットさせるためには完成度が高いダンスミュージックを提供する必要がある。しかし、ここで疑問がでてくる。現状、日本にもダンス&ボーカルで完成度の高いグループはいくつも存在するのだ。しかし、それらのグループはなぜなかなか世界に出ていけないのだろうか。

「ブランディングやプロモーションの問題でしょう。日本の場合、ダンス&ボーカルのグループはアイドルとして軽く見られる傾向があります。どんなにパフォーマンスのクオリティが高くても本格派アーティストと認識してもらえないんです。たとえば、SKY-HIさんが所属してるAAAは歌もダンスも相当なレベルのグループですが、世間一般的には男女混合のアイドルグループという認識だったのでは」(先出、音楽関係者)

SKY-HI(右から2人目)が所属しているAAA ©時事通信社

 このように、完成度が高い音楽を提供していても、そうは認知されていないグループはいくつも存在する。また、この10年で実力派のグループがデビューし、完成度の高い楽曲をリリースしても、鳴かず飛ばずで活動を止めてしまう例もしばしば見受けられた。世界に出ていくためにはまず日本の市場で「本格的なアーティスト」として存在感を示さないといけないが、それが非常に難しい。

 今回、SKY-HIが新グループのブランディングやプロモーションのために選択したのは、韓国や日本で人気を博しているオーディション番組という形式だった。

「未熟な若者」の成長を楽しむ文化

 さて、日本のエンタメ文化にもうひとつ特徴的なものがある。「才能がある未熟な若者」の成長を見守ることを重んじるということだ。宝塚やジャニーズJr.もデビュー前からファンはタレントを応援し、育てていく感覚を味わう。

 オーディション番組では「PRODUCE 101」は知名度が高いが、これも韓国版と日本版ではコンセプトが違ってくる。

 同番組の統括プロデューサーの神夏磯秀は「AERA」(朝日新聞出版)の2021年1月11日号でこう語る。