温暖化対策・環境問題は新しい経済のフロンティア
対照的に具体的な発言をしていたのは、その直前に登場したパリのアンヌ・イダルゴ市長(現・C40議長)。市長たるもの「『複雑な問題だ』『明日はよくなる』で終わってはならない。すぐ市民から要求が出ます。それに答えなければならない」と語り、小池氏がまさに悪い見本のようだった。イダルゴ市長はこの場でも、また記者会見でも2024年の五輪にこだわらず、インフラ整備まで含めた総合的で持続的な具体策・ビジョンを語っていた。
日本では、温暖化対策や環境問題について、ただの綺麗事のように思われがちだ。しかし、実は新しい経済のフロンティアなのである。いまヨーロッパや中国でも全面EV化が叫ばれているが、自動車はただのシンボルで、その周囲ではインフラ整備から家庭用品に至るまで産業革命が進んでいる。
イダルゴ市長は「CityLab2017」で「多くの都市でエコシステムが実行され、新産業を生み出します。今後の経済成長のキーなのです。私たちの都市は実験室です」と語っていた。ことに、トランプ大統領がパリ協定を脱退した現在、アメリカでは市長レベルが政治の重要な担い手となっている。EUでも「補完性原則」といって、従来の国から地方へと上から下への支配を改め、まず身近な市町村からはじめて、国などの上の組織が前者を補完するというスタイルがトレンドだ。
都知事としてパリで過ごしたなら
これまでの小池氏は、単に「風」が吹いて勝ってきたが、「風」を読み違えてあっさりと敗北を喫した。
もし小池氏が全身全霊、都知事としてパリで過ごしたなら、その滞在は、東京にとっても、日本にとっても、ずっと大きな意義あるものになったはずだ。小池氏も「逃亡中の女王様」などと揶揄されずに、世界中のマスコミに注目される「輝く女王」になれたかもしれなかった。
結局小池氏は「首相になりたい」、でも「首相になれなかった女」を花の都巴里で演じてしまい、確固たるビジョンを示せずに帰国した。はたして今後、小池氏が都政に邁進する姿は見られるのだろうか。