人を“殺す”部屋の共通点
そしてこれはあくまで私見ですが、孤独死が起こり、特殊清掃の現場となる部屋には、ある共通点が存在します。それは、湿気です。
もちろん、日本は高温多湿な気候ですから、窓を閉め切って放置すれば湿気がこもり、カビも発生しやすくなります。しかし、いわゆる事故物件になるような部屋はその程度において尋常ではないのです。
実は事件現場清掃人としての仕事を始めて間もないころ、人の死に関わることのつらさや、経済的な苦しさから、このままこの仕事を続けていけるのかと苦悩していた時期がありました。しかし、そんな状況でも宗教には頼りたくない、自分の力で解決したいという気持ちがあり、さまざまな本を読んだり人の話を聞いたりして勉強をする中、たまたま私の故郷の沖縄に伝わる「カミングヮ」という家相学について学ぶ機会がありました。
カミングヮでは、水回りは湿気がこもらない北西に配するのがよいとされます。また、どういった場所を墓地とすべきかなども説かれていて、そのような土地にはたいてい日当たりなどの問題があります。湿度が高い、日当たりが悪いといったことは、家相的にも避けるべきとされているのです。
同じ集合住宅内の複数の部屋が“現場”となることも
日当たりが悪く日中でも薄暗い部屋、あるいは常にカーテンを閉め切っている部屋で暮らしていれば気分は沈むでしょうし、湿度が高ければカビが生じ、生じたカビは感染症や中毒、アレルギーといった健康上の問題を引き起こします。極論かもしれませんが、私は「カビが人を殺す」とさえ感じています。
特殊清掃の現場となる部屋は、例外なくジメジメとしていてカビ臭く、壁面にはカビによって生じた黒い斑点があるものなのです。
ときには一度清掃して次の借り手が見つかった部屋で、数か月後に再び特殊清掃の依頼が来ることもありますし、同じ集合住宅内の複数の部屋が“現場”となることもあります。
また、特殊な例ですが、とあるマンションではフロアの半分が事故物件ということもありました。そこは内廊下で湿気がこもりやすい構造になっており、部屋で人が亡くなればその臭いもこもります。住んでいる人々もなかなか独特で、特殊清掃の作業中、私が何の作業をしているか知ったうえで、あれこれと話しかけてきました。もはや終の住処として「いずれ自分もそうなる」と思って暮らしていたのでしょうか。
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