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 中年男性の孤独死が多い原因としては、これまでいわれてきたように、都市部における地域での人的交流の欠如という面はもちろんあると思います。しかしそれ以上に感じるのが、「人の迷惑になってはいけない」という社会の風潮や、インターネット上の独善的なコミュニケーションの影響です。

「火葬の費用は出せない」

 親類との付き合いはとうに薄れ、恋愛関係や友人づきあいは「面倒なもの」とされることが多くなり、コミュニケーション欲は人と接触しないで済むSNSで満たすことができます。こうして社会から孤立していき、人との関わりが薄れ、結果として孤独死が増えているように感じるのです。

 実際に、もしも自分とほとんど交流のなかった遠い親戚が孤独死したという連絡が突然あったら、気持ちよく葬式を出し、遺骨を引き取ることができるでしょうか? 

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 私の経験では、「火葬の費用は出せない、財産は放棄するからゴミとしてすべて処分してほしい」と言われるケースが大半です。

生活習慣の乱れが孤独死を招く

 冒頭で紹介した空き家の住人の事例もそうですが、中年男性が孤独死した部屋には、ビールの空き缶やコンビニ弁当のゴミが散乱していることが多く、きわめて不摂生な生活を送っていたことが見て取れます。また、この年代の男性は体調が悪くても病院での診察を面倒くさがり、あるいは金銭的に余裕がないため治療費を捻出できず、市販薬で一時しのぎをするということもあるようです。

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 こうしたことも寿命を縮める一因となるのでしょう、孤独死における死因でもっとも多いのは、病死です(*2)。心筋梗塞や脳溢血などによる発作で突然死することもあれば、持病が悪化したことで日常生活を送ることが難しくなり餓死するケースもあります。

*2 第4回孤独死現状レポート(一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会、2019年)

 現場の遺体は検死のために警察が搬出しますが、残された状況から死因が推測できることもあります。たとえば糖尿病やアルコール依存症を患っていた人、内臓系のがんを患っていた人などの遺体から漂う腐臭は独特で、現場に漂う臭いからそれとなくわかるのです。

 また、流れ出た血液がなかなか凝固せずに、床一面に広がるのは糖尿病の場合です。遺体のそばに血で染まったティッシュが転がり、鮮血が飛び散っているのは、高血圧症で鼻の奥の動脈が切れたのでしょう(もっともこれは、私自身が高血圧症だからわかることではありますが)。

 このように、中高年の孤独死が多い理由のひとつには、生活習慣の乱れもあるのです。