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「提出した検体が、まるまる登録されていないことも…」 五輪組織委“ザルPCR検査”の大問題 なぜ陽性認定された審判員は“脱走”したのか?――東京五輪の光と影

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木下工務店で知られる木下グループがPCR検査事業にも注力

 今回“脱走”した2人の審判員が受けた検査では、まず「株式会社木下グループ」の子会社である「株式会社新型コロナ検査センター」がスクリーニング検査を実施。そのスクリーニング検査にて陽性の疑いが出た場合の再検査を、同じく株式会社木下グループが医療協力として業務提携をしている「医療法人社団 和光会 キノメディッククリニック高田馬場」が行うという流れだったという。

 住宅メーカーの木下工務店のイメージが強い木下グループだが、同社はかねてよりPCR検査事業にも注力してきた。昨年12月に東京・新橋駅前に新型コロナPCR検査センターを開設。仕事の出張前や帰省前に、陰性を確認して安心感を得たいという人々が連日詰めかけた。

「五輪やパラリンピックに向けて需要が増えるのを見込んで、体制強化を進めていたそうです。現在、検査センターは都内6カ所7店舗に拡充。さらに、政府がこの夏、羽田空港などからの出発便に搭乗する人を対象に行っている無料のPCR・抗原検査も、同社が受注しています」(経済部記者)

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住宅メーカーのイメージが強い木下グループだが、子会社が五輪PCR検査の一部も担う

 五輪では1日で最大5~6万件の検査が行われるというが、実際にはどのように検査を行っているのだろうか?

自分が提出した検体の登録がない?!

「唾液検査では、各自、配布された透明の容器に唾液検体を入れて提出します。このとき、専用のウェブサイトに、容器に貼られた11桁のバーコード番号と、自身のアクレディテーション(参加資格証)番号、生年月日を入力します。検査結果を個人と紐付けるためです。検体は前述の新型コロナ検査センターが日々回収しますが、提出者のデータ管理は組織委員会が行っています」(前出・技術役員)

 だが、そこであるトラブルが起きたという。

「大会開幕からしばらくして、私の周囲でコロナ陽性者が出たため、専用サイトで自分の検体の登録状況を確認してみたのです。すると、提出したはずの5日間分の検体が、まるまる登録されていないことが分かった。私の入力にミスがあったのか、サイト側の不備なのかは分からずじまい。ただ、検体が登録されていないなら注意喚起を促すような仕組みがなければ、気付きようがありません」(同前)

五輪閉会間際には商業施設に関係者の列がズラリ。検査運営の手順は大丈夫だったのか…?

 実際、組織委員会は8月4日、検査で陽性が確認されながら個人が特定できていないケースが8件あると発表した。専用サイトへの登録ミスが原因とみられるという。つまり、陽性でありながら、それに気付かず業務に従事していた関係者が複数いる可能性があるのだ。

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