文春オンライン

容疑者の過去よりも知りたいこと 「座間9人遺体事件」を読み比べる 

「ネットの闇」とお約束を書くよりも大切なこと

2017/11/10
note

「狙う側」より「狙われてしまう側」の記事を読みたい

「自殺したい」というつぶやきは一見特殊にみえるけど、「~したい」という願望は日常でよく見聞きする。例えば「○○になりたい」だとか「就職したい」というように。

 世の中にはそんな願いを持つ人に近づく大人がゴマンといる。夢を理解するふりをして、話を聞くふりをして、言葉巧みに近づいて結果的に相手を自分の欲望に利用する人がいる。

 そう考えると、今回の事件はまったく特殊ではないことが想像できる。世間と地続きでつながっている。「~したい」とつぶやいた結果のことだからだ。

ADVERTISEMENT

 だから「狙う側」の人生解説なんかより「狙われてしまう側」の今後の記事が必要だ。

10月31日の各紙夕刊は1面トップで報じた

毎日新聞が問いかけた「自殺を考えた時は……」

 毎日新聞が次の記事を載せた。

「自殺を考えた時は……」(毎日新聞 11月4日 東京朝刊)

 という特集である。

《ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)には善意と悪意が入り交じる。自殺を考えたとき、どうすればいいだろう。》

《孤独を感じたことがない人はいない。誰にも相談できずに自殺を考えている人は、死にたい気持ちにどう向き合えばいいのか。》

 そのあと専門家の言葉が紹介されている。

《「若い女の子は死にたい気持ちを身近な人には言えません。心配されて否定されるから。だからSNSで『死にたい、消えたい』と気持ちを吐露しているのです」。》

《ところが、SNSで発信すると、弱さにつけ込まれてしまう。「死ぬのを手伝う、と近づいてくる個人には下心しかありません。絶対に接触してはいけません」。冷静に立ち止まってその人のことを調べるよう、普段から注意すべきだ。》(「BONDプロジェクト」橘ジュン代表)

 自殺は個人の心の弱さが原因でなく、困難に追い詰められた結果だというコメントもあった。