福井県の町立池田中学で起きた二年生男子の飛び降り自殺。町に一つしかないこの中学の全校生徒数は五十二人、教職員数は十九名(昨年四月一日当時)。学力が高い県として有名な福井の中でも、成績上位校だったようね。保護者からは「先生がしっかり見てくれる」「ちゃんと目が行き届いている」という評判もある中、なぜ今回の事件を防ぐことができなかったのか。
町の調査委員会は当該生徒の小学校時代にまで遡って生徒や教員から詳細な聞き取りを実施。その綿密な報告書によると、亡くなった生徒は担任から度々強く叱責され、副担任からは宿題や課題の提出の遅れ等について執拗な指導を受けていた。生徒からの聞き取りでは担任が「(聞く方が)身震いするくらい怒っていた」「階が違っても聞こえた」等とあり、指導に問題があったことは明白。こんなの、教員によるいじめに他ならないわ。
報告書にもあるように、この生徒の状況をよく観察すれば、課題未提出や生徒会活動の準備等に対し、厳しい指導叱責が逆効果であることに担任は気づけたはず。一部の教員は指導法を変えるよう助言したものの、教員間の連携は不足、校長・教頭など管理職も十分に担任を指導しなかった。家庭から副担任との関係等への相談や要望があったのに、担任は副担任への指導や管理職への報告を怠り、担任・副担任がそろって叱責する状況は変わらず、当該生徒は追い詰められていった……。
ボクの教員時代の経験からいうと、生徒の問題行動をいわゆる強面で抑えるタイプの先生は、現場では「指導力がある」と評されて周囲も意見しづらかったりする。小規模校ならではのしがらみも想像できる。でも、子どもの個性に合った指導を考え、学校全体で支援する、そんな教育の原点が置き去りにされてしまった背景に、しっかり目を向けなくてはいけないわね。