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増えつつある孤独死

 孤独死というものは昔から存在する。

 1人で生活をしていて死亡する人はいつの時代にも、どこの世界にもいる。日本の新聞でも明治時代の1884年10月11日付の読売新聞の朝刊社会面には、「丁稚・手代を次々解雇、女房を雇い女代わりに使ったケチ男が孤独死」と孤独に死んだ男の記事も存在している。

 1886年10月14日の読売新聞の記事では、一人暮らしの飯屋の主人がコレラにかかり、看取る者もなく吐瀉死したと報じている。警察にそれを届ける者もいなかったとし、発見後は、周囲を消毒して対処したと書かれている。

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 近年では、孤独死の数はかなり増えつつあるようだ。

 現在、孤独死についての全国的な統計はない。だが調べている自治体はある。例えば東京23区では、2016年に孤独死した人の数は3179人。1日に10人近くが孤独死していることになる。

 東京23区の孤独死は年々増加している。2005年には1860人だったのが、2011年は2618人、2014年には2891人だ。

 また2019年の大阪府警での調査では、大阪府内の孤独死の数は2996人となっている。その年の異状死(孤独死を含む)が大阪全体で1万2309人報告されており、孤独死で最も多いのは70歳代だった。次いで、60歳代、80歳代と続く。男女を見ると、男性の孤独死は2213人で女性の783人の3倍ほどになっている。大阪市の調査でも市内の孤独死の8割は男性だったという。

孤独死の死因の特徴

 日本は世界と比べても高齢化が進んだ国である。高齢化に伴って、単身者も増えており、孤独死も増えているのが実情のようだ。内閣府の高齢社会白書によれば、60歳以上で一人暮らしをしている人の45.4%が孤独死を身近な問題と感じていると答えている。

 日本医科大学の研究では、孤独死の死因の特徴としては、循環器疾患が多い。心筋梗塞や狭心症などの急性虚血性心疾患、さらにはくも膜下出血で亡くなっているということである。これは異状死でも同様の傾向がある。それ以外でも、自殺やアルコール性肝障害が顕著だという。

 近年では、「同居孤独死」という言葉も生まれている。同居者がいるにもかかわらず孤独死が報告されるケースだ。2020年11月、読売新聞は「同居孤独死」の実態についてこう報じている。

「自宅で死亡し、同居の家族らがいるにもかかわらず4日以上発見されなかった『同居孤独死』が2018年の1年間で、東京23区と大阪、神戸両市内で204人いたことが、各監察医事務所への取材でわかった」

 高齢化が進むことによって高齢者のみの世帯が増加したり、認知症や寝たきりなど自宅で介護が行われるケースも増えている。またひきこもりなど未婚の子どもと同居している高齢世帯もある。そういう世帯で、「同居孤独死」が起きやすいという。

 そうした死体が発見された場合、異状死として扱われ、警察によって処理されることになる。