昭和のかっこいい女優といえば、加賀まりこさん。彼女が主演し、日本のヌーヴェルヴァーグと謳われた『月曜日のユカ』はいま観ても新しい。

 17歳でデビューし、20歳でひとり、パリに逃避。写真家・立木義浩に乞われ、ヌード写真集を出したのは27歳のとき。27歳で子供を授かると、シングルマザーとして出産。7時間後に喪ったが、前を向いた。54年ぶりの主演作の公開を前に、その人生について聞いた。

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写真に撮られ「まだキスもしてねぇってのに」

 私なんかは自由に生きてきた方だと思いますよ。“女優さん”であることに縛られずに。今の人はかわいそうね。ネットで何でも拡散されてしまう。そりゃ、私の若い頃にも「まだキスもしてねぇってのに」っていうのは、ありましたよ(笑)。写真に撮られてダメになって。でもまあ、所詮その程度の恋だったんだから、いいんだけど。

 加賀まりこさんは77歳にして今秋、54年ぶりに映画に主演する。その作品『梅切らぬバカ』で演じたのは、50歳になる自閉症の息子を一人で育てる老いた母親だ。

 今は芸能人じゃなくても色々生きづらい世の中だと思うけど、他人のことを気にするなら、その何分の一でも、障害を持つ人や、その家族に目を向けてくれたらいいのにと思うのね。

 私の連れ合いの息子が、自閉症なんです。45歳になったかな。すごく可愛いのよ。私にとっても息子です。コロナのせいでずっと会えなくて、すごく寂しいの。でも、少し前にどうしても届けなきゃならない薬があって、連れ合いが息子の暮らす学園に行って「わかる? 僕のこと」って聞いたら、「加賀まりこ!」って言ったんだって(笑)。

全文は『週刊文春WOMAN vol.11(2021年 秋号)』に掲載中

 連れ合いとは6歳年下の演出家、清弘誠さん。恋多き女のイメージが強い加賀さんだが、59歳の時から18年間、事実婚を続けている。

 彼とは長年の麻雀仲間だったの。最初は私が好きになっても、こっちを向いてはくれなかった。若くして離婚して、お母さんに手伝ってもらいながら育ててきた息子が、自分が老いた後、どうやって生きていけばいいだろうかと彼は頭を悩ませてた。やっと私の方を向いてくれたのは、息子を預ける学園が見つかってから。事情はわかっていたから、私はそれまで5年間、ノックし続けた。