過去の恋愛では、私が一方的に尽くしちゃってた。だから飽きちゃう。連れ合いは私の転がし方が上手いのね。私は事務所に所属せず、マネージャーもなしで一人でやってるから、荷物が多いと現場まで運んでくれる。「付き人扱いして」と言う人もいるけど、彼は他人を放っておけない人なのよ。前に歩いている人がハンカチを落としたら、50メートルくらい全速力で追いかけちゃう。
一昨日は衣装合わせの場所まで車で送ってくれたんだけど、近くに着いたところで「もう大丈夫よ」って降りてビルに入ったら、違う場所だった。後ろを振り向いたら彼がいて「ほら、間違えた」って。
仕事場には一人で行く……いつも他人が一緒は、嫌
加賀さんは神田生まれの、神楽坂育ち。父は大映のプロデューサー。映画人が集まってはいつも議論をしているような家だった。
◇
私は昔から、一生懸命に車止めしているスタッフとか、そういう人たちに優しくしてきたつもり。姉は文化放送、兄も松竹に就職したから、みんな裏方。家族仲が良くて、一人暮らしをしても面白くなかった。今も神楽坂の実家を建て直して、兄夫婦と二世帯で暮らしているんです。姉が亡くなって、悪口を言い合える相手がいないのが寂しいけど。
名前だけ事務所に所属していたこともあるけど、CM契約とか面倒臭いことをお願いしていただけで、作品は自分で選んできました。ギャラの交渉も自分でしちゃう。33歳から20年間付いてくれた付き人が辞めてからは、どこでも一人よ。仕事場に来ればメイクさんもスタイリストさんもいるし、身一つで来てもなんとでもなるでしょ。いつも一緒に他人がいるっていうのは疲れるから。私は、嫌です。
※後半では、20歳で女優を一時休業し、単身渡ったパリでのゴダールやトリュフォーとの交流、文豪・川端康成とのデート秘話、50代での更年期の苦しみなどが語られます。続きは発売中の『週刊文春WOMAN vol.11(2021年 秋号)』に掲載しています。
text:Ayako Ishizu
photographs:Asami Enomoto
hair & make-up:Hiroshi Nomura
styling:Satoko Iida
【週刊文春WOMAN 目次】特集アフターコロナで必要なもの/眞子さまは『人形の家』のノラなのか/片岡仁左衛門 孝玉・仁左玉 全11ページ/没後3年 樹木希林の教え/新しいグレイヘア
2021年 秋号
2021年9月21日 発売
定価550円(税込)