コロナ禍の影響で貧困が拡大する中で年末年始を迎えるにあたり、厚生労働省は各自治体に対して、通常、閉庁期間となる年末年始も福祉の窓口を開けておくことを依頼していた。この呼びかけに応える形で、東京都内でも一部の区市が年末年始期間も日を決めて窓口を開けるという対応を行った。特に豊島区と江戸川区は、年末年始の6日間、休みなく窓口を開けて、生活保護の申請を受け付けたり、住まいのない人に東京都が用意したビジネスホテルを紹介したりという対応をしてくれた。
一部の区が窓口を開けてくれたおかげで、年越し大人食堂等、年末年始に各支援団体が開催した相談会では、現場からすぐに行政の窓口に行き、公的支援につなげるという対応が可能になった。
コロナ禍という特殊な状況とは言え、人々の命と生活を守るために、これらの自治体が積極的な対応を行ったことは特筆すべきことである。こうした動きが来年度以降もぜひ広がってほしいと願っている。
生活保護の利用を忌避する要因は何か
だが、ここでもネックになったのは、相談者の中に生活保護の申請を忌避する人が多いということであった。
「生活保護だけは受けたくない。他に方法はないでしょうか」
昨年春以降、生活困窮者支援の現場で、この言葉を何度聞いたであろうか。
年末年始の活動でも、すでに住まいがなく、所持金が数十円、数百円しかないという状態の人から同じ言葉を聞かされる機会が多々あった。
この忌避感の背景を探るため、私が代表理事を務める一般社団法人つくろい東京ファンドでは、年末年始の各相談会に来ている人を対象に緊急のアンケート調査を実施した。
このアンケート調査には、165世帯の回答があり、うち男性は150人(90.9%)、女性は13人(7.9%)、その他・無回答が2人(1.2%)であった。
アンケートの回答者は食料支援や生活相談のために相談会会場に来ていた方々なので、生活に困窮している状態にあり、ほとんどが生活保護の利用要件を満たしていると推察される。
しかし、現在、生活保護を利用していると答えた人は全体の22.4%にとどまった。13.3%は、過去に利用していたが、現在は利用していないと答え、64.2%は一度も利用していないと回答した。
路上や公園、ネットカフェ、カプセルホテル等の不安定な居所に暮らす不安定居住層は、回答者全体のうち52.1%、生活保護利用歴なしの人々の中では54.7%を占めていた。