多くのファンや著書を持つインフルエンサーのDaiGoが、YouTubeで生活保護利用者やホームレスへの差別を発信した一件。当初は「個人の感想」とのスタンスを崩さなかったが、「命は平等」「傲慢極まりない態度と発言」などと批判され、謝罪動画で「自分の無知が原因」と反省の弁を述べるに至った。
では、彼が知らなかったこと、そして、知るべきこととは何なのか。昨年秋からコロナ禍の貧困の現場を取材し続けるジャーナリスト・藤田和恵氏に聞いた。
「DaiGoさんだけでなく、多くの人に知ってほしい。これは誰の身にも起こり得ること」と藤田氏が語る、コロナ禍の現実とは――。(全2回の1回目)
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「生活保護だけは嫌!」
――藤田さんは今回の発言、どう受け取りましたか?
藤田 真っ先に感じたのは「もう少し現実を知ってから発言してほしい」ということです。私は昨年秋からコロナ禍での生活困窮を支援する「新型コロナ災害緊急アクション」の同行取材を続けていますが、仕事も住まいもスマホの通信機能も、食べるものすら失ってなお、「生活保護を受けるくらいなら飢え死にしたほうがまし」と表情をこわばらせる人や、「もう少し頑張ってみます」と生活保護の申請を拒絶し、自ら路上生活を選ぶ人にたくさん出会ってきました。
コロナ禍でずたぼろになった彼らが、なぜますます自分を追い込むのか。その背景には、まさにDaiGoさんがしきりに主張していた「努力の足りない無価値な人間を税金で養ってやっている」という差別的な価値観があります。長年にわたって社会をむしばんできた歪んだ自己責任論とスティグマ(社会的恥辱感)。そうした現実が、ついにここまで醜悪な形で露呈したかと痛感させられた一件でした。
おそらくDaiGoさんとしては自ら「辛口」と称していたように、「みんなが言いづらいことをズバッと言った!」「ファンにもさぞ受けるだろう」くらいの空気感だったのではないでしょうか。
しかし、実際の社会は、そのように軽々に一刀両断できるほど単純ではなかった。ここで藤田氏のコロナ禍での取材をまとめたルポルタージュ『ハザードランプを探して 黙殺されるコロナ禍の闇を追う』の一節を抜粋し、まずはその現実を紹介する。