体を売っても貧困は解決せず、日々ギリギリの生活を強いられている女性は決して少なくない。新型コロナウイルスと政府による自粛要請は、そうした日本の貧困女性たちを地獄に叩き落とした……。

 そんななか、ノンフィクションライターの中村淳彦氏は、コロナショックに喘ぐ女性たちに直接取材を行い、『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)を執筆した。彼女たちの生活実態はいったいどうなっているのか。ここでは、同書の一部を抜粋し、池袋駅西口で20年以上街娼を続ける女性の生々しい声を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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緊急事態宣言延長は確実…池袋で盛りあがるのは街娼スポットだけ

 売春は売春防止法で禁じられている違法行為だ。

 ソープランドもアダルトビデオも、デリヘルの裏引きもパパ活も、解釈によっては売春防止法違反となる。しかし、この法律が売春する女性に適用されるのは基本的に街娼だけである。理由は法律が生まれた時代背景にある。

 売春防止法が施行されたのは、昭和32(1957)年。戦後、戦争未亡人が困窮して次々に売春婦になったことから生まれた法律で、街から街娼をなくすことを目的としている。売春防止法で罰せられるのは売春婦を管理・斡旋する業者であり、売春婦は保護対象となる。売春婦が刑事罰に処せられるのは、売春の勧誘行為だけだ。街娼が不特定多数の男性に売春を目的に声をかけること、誘うことが厳しく禁止されている。

 池袋西口の街娼たちは、それぞれ営業努力や工夫はしているのだろうが、基本的にわいわいして遊んでいる。目立つように声かけはしていないが、街娼は完全な違法行為だ。違法なので暴力団のテリトリーにもなっている。

写真はイメージ ©️iStock.com

 2020年5月3日。5月6日を期限としていた緊急事態宣言の延長は確実視され、池袋の閑散状態は続いていた。営業を継続していた家電量販店も店を閉めている。盛りあがっているのは駅近くにある街娼スポットだけで、今日も直射日光を浴びながらホームレス、無職、独居老人、街娼たちが集まってバカ騒ぎをしている。前編で紹介した美香さんは、今日も群がる男たちの真ん中にどんと鎮座していた。