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駅前で20年以上体を売り続けた女性(53)が語るコロナ禍のリアル 常連客の高齢者は「行かない!死にたくない!」

『新型コロナと貧困女子』より #2

2021/06/03
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常連を大事にする戦略的な売春

 池袋駅西口の街娼スポットは目立つ場所にある。東京都板橋区在住の筆者は池袋に行くことが多い。事情を知っているので、そのスポットを通るたびにメンバーを眺めている。美子さんはだいたいいる。

 美子さんの外見もお伝えしておこう。とにかく太っている。髪の毛はボサボサで、歯は半分程度がない。体重が重すぎることが原因なのか、最近は満足に歩けないようだ。今日は杖をついている。成り行きに任せる美香さんと比べると、美子さんは常連と頻繁に連絡を取るなど、それなりに戦略的に売春活動をしていた。

――月15万~20万円くらい稼げていたの?

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「そのくらいはあった。常連は大事。うちの仕事は立ちんぼだけど、立ってフリー客を捕まえるのは難しい。ましてやうちはキレイな容姿じゃないし、太ってこんな体型だから声をかけてくる人はいない。けど、太っている女が好きっていう人に引っかかれば、その人を離さないように一生懸命サービスして好いてもらってっていう努力はしたよ。立ちんぼ歴20年以上にして、やっと15~16人を捕まえることができた。やっと普通の生活をつかんだのに、こんなことになっちゃった」

―― 20 万円稼いだら、あそこではトップクラスですよね。

「じいちゃんたちも他の太っている女を探すのが面倒くさいから、『いいや、このコで』っていうのもあるのかも。それでも私にとっては貴重なお客さんで、ただコロナちゃんで全部だめになりそう。先月はどうにか5人来てくれたけど、5人じゃ生活できないよ」

――立ちんぼを20年間以上もやっているんですか。

「そうですね。33歳で東京に出てきてるので、それくらい。それまでは普通の派遣で働いてたけど、派遣でグッドウィルってあったじゃないですか。あれがダメになって潰れちゃって。あとパチンコもしていて、どっちも稼げなくなっちゃって、それでちょうど親と喧嘩して池袋に家出みたいな。そこに何日かいたら、おじさんに声をかけられた。『遊ばないか?』って。『カネやるぞ』って。ちょうどお金も底をついていて『あっ、ラッキー! お金もらえるなら行くべ!』って。あ、その前から地元でパチンコ売春していたので、軽い気持ちで立ちんぼになったのよ」