常連客は高齢者ばかり「悪い! 行かない! 死にたくない!」
数少ない池袋駅西口の街娼たちにも派閥があるようだ。今日は美香さんとは違うグループの街娼と待ち合わせている。桜田美子さん(仮名・53歳)は池袋駅西口を拠点として20年以上、路上に立ち続けている女性だ。
「私は自粛に殺されちゃいます。もう、誰を恨めばいいんですか」
池袋西口にある喫茶店は、今日も混んでいた。ネットワークビジネスや宗教の勧誘だろうか、客層は悪い。杖をついてやってきた美子さんは椅子に座るなり、そう嘆きだした。新型コロナが街娼活動に大きく影響を及ぼしているようだ。
――新型コロナで売り上げが下がったんですか。
「そう、もうめちゃくちゃ。収入はコロナのせいでなにもなくなった。前はあったの。1月までは普通にあった。家賃を払って光熱費を払って、生活ができる程度のお金は入ってきていた。コロナで客足がなくなっちゃって、もう殺されちゃうくらい」
――何月くらいからおかしくなったんですか?
「2月末から急によ。うちの常連さんは、みんなお年寄り。みんな怯えて家に籠もるようになっちゃった。『大丈夫だよ。マスクをしてくれば!』って電話しても、『万が一があるから。悪い! 行かない! 死にたくない!』って。電話切って『バカヤロー!』みたいな。いま電話も止まっちゃった。お金がなくて支払いができなくなったんで『お客様のご都合により……』っていう状態。客に連絡もできないわ」
――路上じゃなくて電話で客を呼ぶんですね。
「常連は電話で呼んで、あとは西口に直接来る人もいる。路上に立っていれば声をかけられるけど、常連を電話で呼ぶほうがメインだね。今日来なよって呼ぶんではなくて、前もっていつ来れる?って。電話つながっているときは連絡しまくったけど、『こんな状態で行けると思う? コロナにかかったら死ぬんだぞ』って逆に言われた」
――客は本当に高齢者ばかりなんですね。
「みんな60歳以上。定年退職を迎えた老人ばかりで、太った女が好きっていう人が集まったのかな。生活保護の人はいないかも。太った女好きの高齢者。売春代は最低1万円で、最高1万5000円。ほとんど収入がなくなっちゃった。私はこれでも15人くらいは常連がいるの。みなさん必ず月1回は会ってくれてた。だからどうにか食べていけたけど、みなさんコロナに怯えてもうだめです」