YouTubeで生活保護利用者やホームレスへの差別を発信したインフルエンサーのDaiGo。批判を受けて、「自分の無知が原因」と反省の弁を述べるに至った彼が知るべき現実とは何なのか。

 昨年秋から継続的に貧困の現場を取材しているジャーナリスト・藤田和恵氏が、コロナ禍のリアルを語った。(全2回の2回目。#1から読む)

「メンタリスト」として活動するDaiGo(オフィシャルサイトより)

普通の暮らしが突然どん底へ落ちる

――藤田さんは貧困の取材を長く続けていますが、コロナ禍とそれ以前とでは違いはありますか?

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藤田 炊き出しなどの現場では、以前は中高年の男性が中心だったのに対し、コロナ禍では若者や女性、外国人など、年齢や性別、国籍を問わないようになったと感じます。身なりもいわゆる路上生活者には見えない人も増えました。つまり、それまでかろうじて仕事も住まいも持っていた人々が、いきなり明日食べるものにも困るという状態にまで突き落とされているということです。何日も街を放浪し、SOSを受けて駆け付けたときには、「まさか自分がホームレスになるなんて……」とショックを受けている人も少なくありません。

 同行取材では、20代、30代の若者に出会う機会も多いです。生活保護を利用する条件として劣悪な無料低額宿泊所(無低)に放り込まれ、「収容所のようなところに入れられているので助けてほしい」とSOSを発信してきた20代の男性のもとに駆けつけたり、ワンルームマンションの1部屋に8人が詰め込まれた“脱法ドミトリー”で暮らす30代の女性の夜逃げを手伝ったり、取材を始めるなり、さまざまな現場に遭遇しました。

――コロナ禍の当初は「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」という議論がありましたが、それも次第に聞かなくなり、感染者数やここ最近はオリンピックの話題ばかりでした。まるで、経済で死んでいる人はいないと錯覚してしまうほど。

藤田 実際には住宅支援や不安定雇用など、これまで放置されてきた問題のツケがコロナ禍で噴出しています。水面下では確実に社会の底が抜けているんです。ただ、悲しいことに、こうした問題が政治やメディアで大きく取り上げられることはありません。

 視聴者のウケばかりを狙い、専門家でもないコメンテーターやタレントに“逆張り”的なコメントを求め、目先の数字ばかりを追い求める――そうした一部のメディアの姿勢も、DaiGoさんのような“無知”を生み出す、ひとつの要因になってきたのではないでしょうか。

 かつて人気お笑い芸人の母親が生活保護を利用していることが分かったことをきっかけに、すさまじい生活保護バッシングが巻き起こりました。当時、一部の政治家やメディアも世の中に不正受給が蔓延しているかのような誤った発言、発信を垂れ流しました。実際は不正受給の総額は生活保護費全体の0.4%に過ぎないのですが。しかし、そうした事実は黙殺され、代わりに社会全体にスティグマと自己責任論が植え付けられました。