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2021/10/02

撤廃に向け、まずは運用限定を

 私は前時代的な扶養照会という仕組み自体をなくすべきだと考えているが、現在の政治状況ではすぐに完全撤廃することは難しいと判断している。

 2012年には芸能人の親族が生活保護を利用していることを一部の自民党議員が取り上げ、生活保護へのバッシングを展開するという事態が生じた。翌13年には、このバッシングの影響で、福祉事務所が親族への圧力を強化することを可能にする法改正まで行われてしまった。

 扶養照会の完全撤廃は、明治時代に作られた民法を現代に合わせて、どう変えるべきかという議論にもつながるため、時間がかかるであろう。

 そこで、コロナ禍で生活困窮者が急増しているという現実を踏まえ、まず扶養照会の運用を最小限に限定することを求めたい。

 具体的には、生活保護を申請した人が事前に承諾し、明らかに扶養が期待される場合にのみ、照会を実施するとしたらどうだろうか。

 これならば、厚生労働省が新たな通知を発出するだけで実現できるはずだ。

 私たちは、「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください!」というネット署名を展開している。ぜひご協力をお願いしたい。

(※追記)扶養照会の運用改善を求めるネット署名には約5万8千人が賛同した。こうした声を受け、厚生労働省は2021年2月、音信不通が10年以上続いている等の事情がある場合は扶養照会を行わなくてよいこと、DVや虐待がある場合は親族に連絡をしてはならないこと等を求める通知を地方自治体に発出した。さらに3月末には、生活保護を申請した本人が親族への照会を拒否する場合は、事情を丁寧に聞き取ることを求める通知を発出。本人の意思が一定程度、尊重される運用に改善されることになった。

本書『貧困パンデミック』からの掲載箇所は、朝日新聞社の言論サイト「論座」の長期連載企画『貧困の現場から』を基に編集されたものである

【前編を読む】感染症予防の観点から見ると「野宿の方がはるかにマシ」 自宅療養の推進で明らかになった“自宅格差”の実態

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