現在、生活保護を利用していない人(128人)に、利用していない理由を聞いたところ、最も多かった回答は、「家族に知られるのが嫌だから」で34.4%にのぼった。20~50代に限定すると、「家族に知られるのが嫌だから」は77人中33人(42.9%)にのぼっていた。
多い回答としては、「相部屋の施設に入所するのが嫌だから」(18.6%)があった。不安定居住層では、「相部屋が嫌」をあげた人が74人中21人(28.4%)を占めていた。
「生活保護の制度や運用が以下のように変わったら利用したいですか?」という問いに対しても、「親族に知られることがないなら利用したい」という選択肢を選んだ人が最も多く、全体の約4割にのぼった。「すぐにアパートに入れるなら利用したい」を選んだ人も約3割いた。
最大の阻害要因である扶養照会
また、現在、もしくは過去に生活保護の利用歴のある人たち(59人)に、扶養照会に抵抗感があったかどうかを聞いたところ、「抵抗感があった」と回答した人は54.2%で半数以上にのぼった。
扶養照会とは、福祉事務所が生活保護を申請した人の親族に「援助が可能かどうか」と問い合わせることである。照会は通常、2親等以内(親・子・きょうだい・祖父母・孫)の親族に対して、援助の可否を問う手紙が郵送される。過去におじやおばと一緒に暮らしていた等の特別な事情がある場合は、3親等の親族に連絡が行くこともある。
問い合わせの結果、親族が生活保護基準を上回る金額を援助するということになれば、「民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。」という生活保護法4条2項の規定に基づいて、親族による扶養が優先されることになる。
厚生労働省は、DVや虐待があった場合は問い合わせを行わず、20年以上、音信不通だった場合や親族が70歳以上の場合など、明らかに扶養が見込めない場合は問い合わせをしなくてもよいと各自治体に通知をしているが、この通知を遵守せず、「申請したら親族に連絡をさせてもらう」と言って、申請をあきらめさせようとする自治体も一部に存在している。