「万歳! 万歳!」「お手を拝借」はおかしい
小錦 そう言えば優勝インタビューのとき、白鵬がいきなり万歳三唱をしたり、手締めをしたこともあったよね。休んで出て来て、優勝したからといって、「万歳! 万歳!」「お手を拝借」なんて、やっぱり、おかしいよ。僕は大相撲は伝統文化だと思っているけれど、エンターテイメントとして見る人には、あんなことも楽しいのかな。
武蔵川 「タクシーストップ事件」もあったな。あれは4年前か。嘉風戦で寄り切られて負けちゃった白鵬が、立ち合いに納得がいかなくて、審判の親方たちにアピールするため、土俵の下で手を挙げて、しばらく動かなかった。あそこでいくら手を挙げてもタクシーは来ないのになぁ(笑)。
小錦 ははは(笑)。してはいけないことぐらい、白鵬もたぶん分かっているだろうに。頭もいいんだからね。
白鵬はすごくいいこともやっているのに残念だよ。「白鵬杯」という子どもたちの国際的な相撲大会を10年も続けているけれど、これは本来なら協会が率先してやるべきこと。それを白鵬がひとりで一生懸命やっている。
横綱は協会の看板を背負っている
武蔵川 でも、いまの白鵬の相撲を、子どもたちが真似しちゃうと困ってしまうよ。東日本大震災で慰問の横綱土俵入りをしたりと、せっかく良いこともしているのに、もったいないよ。
ただ、「相撲界に貢献しているんだから、大目にみてあげろ」というのは違うと思う。土俵上の振る舞いと、土俵外の行動はまったく別の問題だからね。
小錦 行動については、海外のプロスポーツのほうが厳しいかもな。
武蔵川 アメリカのNFL(アメリカンフットボールのプロリーグ)でも、選手が組織に迷惑を掛けるような行動をとったら、すぐに処分されてしまう。本当に厳しいよ。相撲界の横綱だからというだけではなく、「プロスポーツマンの心」が大事。すごくシンプルなこと。
僕だって、白鵬の良い行動は、ほめてあげたいと思っているよ。でも、文句を言われるようなことばかりしている(笑)。とくに横綱は協会の看板を背負っているんだから、協会や師匠に迷惑を掛けるようなことはダメ。自分だけの考えで動いちゃうのはダメなんだよ。これだけ優勝回数も重ねているのに残念だよね。
小錦 もったいないよ。