文春オンライン

2021/09/26

白鵬のあのヒジは「かち上げ」ではない

武蔵川 まず僕が言いたいのは、最近の白鵬は相手の顔面あたりを狙って、ヒジを入れる技を連発していること。あれはプロレスでいう「エルボー」。「かち上げ」という相撲の技ではないよ。左で思いきり頬を張るのも、まるで「ビンタ」しているみたいだ。以前の白鵬は当たって右四つになって攻めていたけれど、もうそんな形の相撲はとれないということなのだろうね。

 右のヒジにサポーターをしているけど、あのヒジ、痛くないんじゃないかな。もしケガをしていたら、わざわざ、痛めているところを使うわけはないよ。あのサポーターはボクシングのグローブの代わりみたい。

 ここまで僕が厳しく言うのは、ヒジを顔面に当てると相手が脳震とうを起こす危険があるからなんだ。その後の相撲人生に関わる大きな問題なんだよ。先場所の千秋楽で照ノ富士もエルボーをくらったけど、それに耐えられるくらいに稽古をしているし、白鵬が狙ってくることも充分にわかっていたから、大丈夫だったんだよね。

 六場所の休場を経て、7月の名古屋場所に臨んだ白鵬。進退のかかった場所だったが、千秋楽結びの一番で大関・照ノ富士との全勝対決を制し、45回目の幕内最高優勝を決めた。自身の持つ優勝回数の記録を更新したが、その一方で、かち上げや強烈な張り手、雄叫びをあげながらのガッツポーズなどが物議をかもした。

ヒジを当てにいく白鵬

乱暴な張り手やかち上げは禁止を

小錦 14日目の大関・正代との一番、白鵬は立ち合いで、俵近くまで下がって仕切っていたよね。あれには驚いたよ。武蔵川親方も「おいおい、巡業の初っ切りか?」と言っていたけど(笑)。

武蔵川 ほんと驚いたよ。いまの白鵬は横綱の取る相撲ではないな。以前から僕は何度も同じことを言い続けているけど、もう疲れちゃった(笑)。

 問題なのは、若いお相撲さんたちが横綱の真似をしてしまうこと。昨日今日入ってきたような新弟子や、学生出身力士たちが、横綱の真似して張り手をしているんだから本当に驚くね。昔だったら、若い子がそんな相撲を取るなんてあり得なかったのに。

小錦 白鵬に危険な技を止めさせたり、引退させるべき時期は、もうとっくに越えちゃっていると思う。あんな相撲は先場所だけじゃないからね。

武蔵川 そうだね。一昨年の十一月場所では、遠藤が白鵬のエルボーを食らって土俵の上で崩れ落ち、鼻血を出したことがあった。相撲協会も、乱暴な張り手やかち上げは禁止するルールを作ったほうがいい。以前、エジプト出身の大砂嵐という関取が、エルボーもどきのかち上げをしていたことがあったけど、このときは師匠が止めさせた。白鵬の場合、師匠が言えないからダメなのか、本人が師匠の言うことを聞かないからなのか……。