文春オンライン

2021/09/26

なぜ何度も休場できるのか

小錦 いちばんの問題は、出ては休み、出ては休みを繰り返している横綱が、土俵に上がれるということじゃないかな。白鵬は何度も長く休んでいるし、今年3月に引退した鶴竜もそうだった。

 貴乃花も武蔵川親方も長く休場したことはあったけど、「もう横綱としての相撲が取れない」というので、長く休んだ後は、いさぎよく引退したよね。

 大横綱の北の湖さんも、千代の富士さんも、貴乃花も武蔵川親方だって、いまみたいに何度も休場することが許されていたのなら、もっともっと優勝回数が増えていたかもしれない。でも「相撲道を守ろう」「横綱の地位を汚さないように」と引退の道を選んだ。

武蔵川 僕の場合は、引退を決めた当時、正直にいえば「横綱は引き際が大事なんだ」とまでは考えていなかった。でも自分の相撲が取れなくなり、騙し騙し相撲を続けることができなかったんだよ。

2001年5月、大相撲夏場所千秋楽での武蔵丸と貴乃花。武蔵丸は横綱相撲で土俵を沸かせた

小錦 ずっと手首を痛めていたんだよね。

 考えてほしいのは、白鵬のように休場を繰り返しても土俵に上がれるということは、協会が彼を「生かしている」ということなんだ。本来なら師匠が引退させるべきだけど、師匠がコントロールできないのなら、協会がストップさせなきゃいけないよ。

 白鵬をみていると、「まだやらせてくれるのなら」と、記録を追い求めているだけに思えるね。でも、それを許してきたのは誰? 師匠でしょ? 協会でしょ? やはり協会もビジネス的には横綱の存在が欲しいんだよ。昔と比べて協会が変わったんだと僕は思う。歴代の横綱たちには許されなかったことなんだもの。

武蔵川 お客さんだって、横綱の結びの一番は手に汗握る大相撲を見たいはずなのにね。