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小説、楽曲、小説…創作の循環が始まる

渡會 『応えろ生きてる星』は、自分のことと思って感情移入して読んだら怖いなと思って。こういう、あったものが失われてしまって、取り戻そうとしていくストーリーっていろんなタイプの話があって、終わり方は様々だと思うんですけど。第5章からの、スピード感が圧倒的にぶわーっとあがって、急に快速電車に乗ったみたいな感じが好きです。そこまでは丁寧なメンタルの描写と会話のラリーで見せていて、あそこから急に全部が動き出すのが、面白い体験でした。

新刊『応えろ生きてる星』と、『After Fork in the Road』の縁。©杉山拓也/文藝春秋

竹宮 今回、推薦文を2つご提案くださって。

渡會 もうひとつは「自由落下するアラサー・イン・ザ・ダーク」でした。主人公がバスルームで倒れるシーンがすごく重要なシーンだと思って、人生的にも落下していってるし、竹宮さんが村上春樹さんをお好きだというのを見かけて。

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竹宮 渡會さんの歌詞にも村上春樹ワールドがちょいちょい入っていますよね(笑)。「風の歌を聴け」(アルバム『マスターオブライフ』収録)とか。

渡會 語呂的に「アラサー・イン・ザ・ダーク」ってかっこいいなと思って、使われなかったら自分の曲で使おうかなと思って(笑)。仕事柄、作品を読ませていただきながら勉強してると思ってるんで、今日もお話できて、次の創作へのアイデアをすごく沢山もらった気がします。

竹宮 新作を作ってくださったら、また私のアンセムにします。すばらしい循環じゃないですか。

渡會 同じ言葉を使う者ということで紹介していただいて、別業種で、サイクルができあがっていくのって、とても刺激的で。この紙の状態で原稿を読むっていうのも、馴染みのバーで読んでたら、店員さんに「役者でも始めたんですか、それ、台本じゃないですか」と。それも楽しかったですね。

竹宮 今回、『応えろ生きてる星』を書き上げてからアルバム『After Fork in the Road』を聞かせていただいたんですね。すでにあるものに、自分をのせていくのは、とても失礼なことなんじゃないかと思いながらも迸(ほとばし)ってしまってやめられないんです。

渡會 「Fork in the Road」はフォークの様に枝分かれしている道という意味の慣用句で、「After Fork in the Road」は『人生の分岐点を越えた後』、というようなニュアンスで使っています。

竹宮 今回の小説もまさにその分岐後なんですよね。自分の中で明らかにしていたテーマとしては置き去りにした過去の自分を、そのままにして忘れたふりして生きていっちゃうのか、今更どうにもならないしと思うのか、それでもそんな自分を見つけて、肯定して、もっと確かに意志を持って前向きに生きていこうとするのか、どっちを選ぶのかだったんです。

渡會 なるほど。