歌詞に変なものを放り込んでみると
渡會 なるほど。ところで、お手元にお持ちのノートはなんですか?
竹宮 今日は、渡會さんとお話できるということで考えをノートにまとめてきたんです。
渡會 えーっ、すごい。しかもかなりのページ数ですね!
竹宮 渡會さんの歌詞は、現実の世界の地続きであることを感じさせつつも、ちょっと素敵なワードが、ぽん、ぽんと入ってくるんですよね。たとえば「新千歳空想」(アルバム『マスターオブライフ』収録)で急に「ベニクラゲ」とか「月の海」とかが入ってくるのとか。
渡會 なにか変なものを放り込んでやるといいじゃないですか(笑)。
竹宮 「After Fork in the Road」(アルバム『After Fork in the Road』収録)の「心象のハイウェイで振り返る」とか。すごくかっこいい言い方だなあと。
渡會 なんかすいません(笑)。ありがとうございます。
竹宮 この素敵さを理解して、編集者は私が渡會さんを聞いたらすごく感激するってことを、わかってくれたんだ、って。ちゃんと伝わっているんだなってすごい変なところでシミジミしました。
渡會 間接的に仲人みたいなことをさせていただけたのなら嬉しく思います(笑)。作家さんと編集者ってとても密なつながりなんですね。ミュージシャンでも、作ってるバンドと、ディレクションするディレクターがいて、うちの現場は全部僕なんです。あとは、全部メンバーそれぞれに任せる感じで、チェックを入れる人が誰もいないので、時々、チェックを入れる人がいてほしいなと思うときもあるんですけど。
竹宮 内容を深めるチェックはウェルカムなんですけど、誤字とか誤用とか、日本語として間違ってるときは、とても恥ずかしいです。
渡會 それはしょうがないですよね。
竹宮 私は声を大にして言いたいんですけど、日本語がうまく使えるから小説を書いてるわけじゃないんだ、と。
渡會 ハハハハハ。
竹宮 ただ物語を書きたいという気持ちがあるから小説を書いてるんだよ、と。
渡會 読者側としては勘違いしやすいところかもしれないですね。日本語の達人というか、日本語使い! みたいな。
竹宮 そういう方ももちろんいらっしゃるけど、私は違う。
渡會 ミュージシャンも絶対音感を持ってるやつらばっかりじゃないですからね。むしろ音痴なやつとかもすごくいますし。どちらかというと欠損がある人がその逆の道を選ぶみたいなパターンが多いのかなと。ボーカリストで喘息持ちってすごく多いんですよ。そのくせタバコも吸って、お前は何がしたいんだと。以前の僕は完全にそれでしたけど(笑)。肺も喉もいじめて、それを仕事にしている。そういうところにそれこそ原動力があるのかなと。