キャスト329人。3監督・4班体制、スタッフ総勢1000人以上。空前絶後の規模にして、大成功を収めた映画『シン・ゴジラ』。あの名場面はどう生まれたのか? 樋口真嗣監督と泉修一役・松尾諭さんが語り尽くします! (全2回 #2につづく)

樋口真嗣監督(左)と泉修一役・松尾諭さん(右)

『MM9』がなかったら『シン・ゴジラ』はなかった

松尾 こうやって対談するのは初めてですね。

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樋口 最初に松尾さんに会ったのは、いつだっけ?

松尾 『MM9』ですよ。伝説の深夜ドラマ。あれがなかったら『シン・ゴジラ』はなかったという。監督が樋口さん、キャストに高橋一生、ピエール瀧さん、橋本じゅんさん……。そして『シン・ゴジラ』総監督・庵野(秀明)さんも出演してました。

樋口 粟根まことさんも出てました。『MM9』はもう5年前くらいになる?

松尾 いや、もっと前ですよ。僕に子どもが生まれる前ですもん。7年前ですか。

樋口 俺がもう映画に疲れてて、これからはテレビと配信の時代だって、テレビドラマをやってみたくなったんですよね。そこで一緒になって、仲良くなって、僕の撮るやつ撮るやつ全部に……。

松尾 いやいや、そんなことないですよ。『のぼうの城』とか全然お呼びがかからなかったですからね(笑)。5年くらい前に偶然会って、それで『進撃の巨人』の役をいただいたのが樋口さんとの2回目のお仕事です。あのときは、茨城の高萩にある廃墟でロケしていたら、ロケハン中の樋口さんに遭遇して。

 

最初は松尾諭=泉修一役を考えていなかったんです

樋口 あのとき、松尾さん救急隊の格好してたよね。

松尾 そうです。その格好のまま「何してるんですか?」って聞いたら「『進撃の巨人』のロケハンだ」って。

樋口 あの格好のせいで、いつもより若く見えた。「若い役、いけるな」ってそこで思って、ちょうどいいやって役のオファーをしたんです。

松尾 僕その時、40手前のオッサンですよ。三浦春馬と同じ21、22歳の設定って……。石原さとみの後輩という役でしたからね。

樋口 そうか『MM』やって『進撃』やって『シン・ゴジラ』か。

松尾 メシの誘いはよくいただくんですけど、仕事の誘いは3回。ありがたいご縁です。

樋口 『シン・ゴジラ』のときは、松尾さんを「この人取ったぁーっ!」バシーッて感じで百人一首の全国大会みたいにキャストとして確保したんですよ。

松尾 それはありがとうございます。

樋口 最初は「保守第一党政調副会長・泉修一」の役ではない、別の役を考えていたんです。というのは、長谷川(博己/内閣官房副長官・矢口蘭堂役)さんと絡ませたくなかった。長谷川さんと松尾さんの絡みって『デート』での印象が強くなりそうだったから。映画の中で長谷川さんは政治家として見えなきゃいけないのに、松尾さんと一緒になった途端『デート』のあの高等遊民に見えちゃアウトでしょう。だから、ちょっと心配だったんだけど、全然大丈夫だった。