興行収入82.5億円。キャスト329人、スタッフ総勢1000人以上。『シン・ゴジラ』はなぜ大ヒット映画となったのか? あれから1年。樋口真嗣監督と泉修一役・松尾諭さんが秘話に次ぐ秘話を語り尽くします! (#1からつづく)
◆
松尾 ゴジラを最初に見たのって、樋口さんいつ頃ですか?
樋口 小学生のときにテレビで観ました。僕ら子どもの頃は土曜日の夕方、8チャンネルで4時からいろんな怪獣映画をやっていて、「もうゴジラやるから帰るわ」って友だちと遊ぶの切り上げてましたから。
松尾 野球とか途中でやめて、帰っちゃう。
樋口 そう。友情より怪獣をとった。
松尾 ハハハ。しかし、そんな樋口少年が、将来ゴジラの監督になろうとは。
樋口 ゴジラ役を野村萬斎さんに演じていただくことになるとはね、思いもしませんでしたよ。野村さんは「なりきりたいから面をつけさせてくれ」と仰ってくださって、能面を参考にしながら同じような造りのゴジラのお面を作って、それをつけて動いていただきました。
松尾 その動きをモーションキャプチャで反映させたんですよね。
樋口 そうです。能・狂言には獣や、精霊が登場することも多くて、野村さんから教えてもらうことも色々ありました。「こういったものは右から出てくるものです」とか。あとゴジラの手の向き。今までは指の部分が下向きになっているんですが、今回は上向いてるんです。東洋のドラゴンは球をガシッと上向きに掴んでいるイメージが多いから。これも萬斎さんから教えてもらって参考にしました。
観た人が内容を秘密にしてくれたことに、ものすごく感謝しています
松尾 しかし、こんなにヒットすると思いました? 僕らも夢物語的に「これはもしかしたら50(億円)行くんじゃない?」なんて興行収入のことを話してましたけど、まさかここまでになるとは。
樋口 2012年に公開した『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が52.6億円だったんですが、そこまで行かなかったら、これは東宝のせいだって言う準備はしてたんですよ(笑)。82.5億円という数字になるとは、正直驚きました。
松尾 素人感覚で言いますけど、ここ最近の映画の流れとは違う作品ですよね、いろんな意味で。みんなが狭いメインストリートをひしめき合いながら歩いていたところに、いきなり特撮怪獣映画という道がバーンと登場して、しかも好き嫌いが分かれそうなジャンルなのに、多くの観客が楽しんでくださった。
樋口 観てくださった方にものすごく感謝したいのは、みなさんそれぞれが内容を秘密にしてくれたことです。観たときに喜びが増すであろうという配慮を、みんなでしてくれたんですよね。これは本当にありがたかったです。お客さんのそういった気持ちの共有あってのヒットだったと思っています。