「いつまで会議してんだー!」「怪獣出せ! 怪獣!」
松尾 『シン・ゴジラ』って海外ではどんな感じだったんですか?
樋口 スペインのサンセバスチャンで開催された映画祭に『シン・ゴジラ』を出品することになって、行ったことがあるんだけど、松尾さん、フランス大使役の人覚えてる?
松尾 あの、椅子に座ってる、あの人ですよね。
樋口 そうそう。モレリ駐日仏国大使役のダニエル・アギラルさん。スペイン人の日本映画研究者で、「フランス大使役やってください」「僕、フランス人じゃないよ」「出て出て」って感じで出演してもらったんですけど(笑)、ダニエルさんに招かれて映画祭に行ったんですよ。何て言えばいいのかな「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」みたいな感じで、同時に出品したのが『大怪獣モノ』の河崎実さんや、『自傷戦士ダメージャー』の井口昇さん。オープニングで『シン・ゴジラ』上映してもらったんだけど、ちょっと嫌な予感はしてたんですよ、客席を見て。盛り上がっているんだけど「はい先生、聞こえませーん!」みたいな感じで。
松尾 野次じゃないですか(笑)。
樋口 「いつまで会議してんだー!」とか「怪獣出せ! 怪獣!」とか言ってるんですよ、たぶん。スペイン語わかんないけど。
松尾 一種の『ニュー・シネマ・パラダイス』状態ですね。
樋口 あと、釜山国際映画祭もすごかった。国際映画祭だから英語字幕が出る、韓国語字幕が出る、中国語字幕もあったかな。おまけに元々、「巨大不明生物特設災害対策本部(二階会議室)」みたいな日本語の字幕も入っているから、画面がニコニコ動画みたいになっちゃって。
松尾 セリフもまた難しいのが多いから、迷惑な映画だったでしょうね。
樋口 だって奥の方にいる役者さんの顔とか、字で見えなくなっちゃってるんだもん。
地上波放送では「安田のバルス」はどう?
松尾 巨災対のみなさんは、本当にセリフまわしに苦労したって。津田寛治さん(森 厚生労働省医政局研究開発振興課長〔医系技官〕役)も、塚本晋也さん(間 国立城北大学大学院生物圏科学研究科 准教授役)も言ってました。ただでさえ人がいっぱいいる中で、動きながら、専門用語満載の長ゼリフを言って、次の人も長ゼリフ言って、次の人もって、長回しだから失敗できないプレッシャーも出てきて……。
樋口 マジカルバナナみたいに。だから、巨災対の役者のみなさんの待機場所は、シーンとしてました。みんなセリフを忘れないように、人と話さないようにしていて。
松尾 役どころもみんな、人見知りな感じの官僚ばっかでしたから、雰囲気としては丁度いい感じ。僕みたいに、現場でペチャクチャ喋ってる人間ってあんまりいない(笑)。
樋口 現場はいまどきの、クールな感じでしたよ(笑)。
松尾 地上波で放送されることになったそうですが、『ラピュタ』の「バルス!」みたいに、みんなで盛り上がるシーンってどこですかね?
樋口 みんな一斉に「ウァーッ!」って奇声をあげるのはどう? 高橋一生くんが演じた安田(文部科学省研究振興局基礎研究振興課長)が「ウァーッ」ってやるところ。
松尾 安田のバルス。
樋口 あとは、松尾さんところでしょう。みんな揃って「まずは、君が落ち着け」。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
ひぐち・しんじ/1965年東京生まれ。高校卒業後『ゴジラ』(84年/橋本幸治監督)で特殊造形に携わったことがきっかけで、映画界に入る。その後“平成ガメラシリーズ”で特撮監督を務めたほか、『日本沈没』(06)、『のぼうの城』(12)、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 前後篇』(15)などの監督作品がある。
まつお・さとる/1975年兵庫県生まれ。映画・ドラマで存在感ある脇役として活躍中。出演映画作品に『テルマエ・ロマエ』、ドラマ作品に『最後から二番目の恋』『デート』『ひよっこ』など多数。