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菅政権の肝煎り政策は「誰かが言っていたもの」ばかり…背後にいた“謎の外国人”と“大物金融ブローカー”とは

『墜落 「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』より #2

2021/09/28

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 政治, 読書

note

菅―アトキンソンラインの生みの親?

 つまるところ、菅はスマートな外資系アナリストを表看板に据え、以前からあるもっともらしい政策を、あたかも独自のアイデアであるかのように進めているに過ぎない。

 ただし、アトキンソンが社長を務める小西美術工藝社は、日本の伝統文化に携わる産業とはいえ、売上げ規模10億円と大企業とはいえない。外資系アナリストにとって、ビジネス上さほどうま味のある会社とも思えない。

 なぜ菅がアトキンソンにたどりついたのか。アトキンソンはどうやって老舗の文化財補修企業の経営を手掛けるようになったのか。そこについては、謎が残るのである。

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 菅政権の誕生後、永田町や霞が関では、政権中枢と外資系アナリストをつなぐキーマンの存在が囁かれている。それが国際金融ブローカーの和田誠一である。永田町が騒いでいるのは、和田が小西美術工藝社の会長に就いているからだ。アトキンソンは14年4月に会長と社長の兼務を自ら解き、代わって和田が会長に就いた。

 和田は90年代、サラ金「武富士」の資金調達をしてきた。その筋では知られた金融ブローカーである。元武富士の役員が説明する。

「サラ金が社会問題化して、武富士が日本の銀行から融資を受けられなくなったときに頼ったのが、和田でした。香港にギガワットインベストメントなる会社を持ち、東京のアークヒルズにあった会計事務所を行き来しながら、武富士のために動いていました。和田が香港に拠点を置いたのは税逃れのためだとも囁かれ、米バンカーズトラストなどから3000億円を調達した。それが京都駅前の同和地区の地上げ資金として使われたのではないか、とも取り沙汰されました」