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陰のMVP!? ドラゴンズ球団公式YouTubeを更新し続ける“岡田さん”って何者?

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/10/10
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地道に顔と名前を覚えてもらうことから始めた

 4月、ある光景を見て心を打たれた。通常、試合前練習が始まるのは試合開始の4~5時間前。個別にランニングしている選手はちらほらいるが、まだ動きが完全停止している薄暗いドーム内に、岡田さんの姿があった。

 何をしているかと思えば、一塁側ベンチ前でロッカールームから出てくる選手や首脳陣にひたすら声をかけていたのだ。長く会話が続く選手もいれば、あいさつ程度で終わる選手もいる。まるで新たに赴任した記者が、選手やコーチに対して必死に顔と名前を覚えてもらおうとしているかのようだった。

 同じ「CD」マークのジャージを着ていれば、簡単に撮らせてくれるというのは大間違い。岡田さんは「チームの一員だからこそ、記者時代よりも繊細な気遣いでカメラを向けたい」と、小さな信頼を積み重ねて、今シーズンの動画を丁寧に撮影してきた。

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 テレビマン時代、楽天を担当していた時には、来る日も来る日も選手の通路に立ち続け、お目当ての選手に覚えてもらった。丹精込めて作った映像は、やがて選手の心に響く。則本昂大投手の信頼を勝ち取ったことは岡田さんの記者としての原点でもある。

 そんな姿を見ているからこそ、多くの選手が関心を向けてくれるようになった。エース格となった柳裕也は、チームで最多の登場回数を誇る。チャンネル登録者数10万人突破でもらえる銀の盾を受け取った際には、「全部、僕のおかげですよね? 僕の頑張りで無事10万人達成することができました。10万人登録しましたユーチューバ―の柳です」と、ご機嫌で答えてくれた。ライバル(?)の梅津晃大は「柳さんに負けないためにも、来年は勝ちまくってたくさん出たい」と鼻息を荒くしている。

 全ての作品、動画に力を込めているが、その中でも岡田さんの会心作がある。現在も再生数57万回超(10月8日時点)で、堂々1位の「緊急企画 #根尾昂選手のプロ初ホームラン舞台裏!」だ。

©中日ドラゴンズ

 5月4日のDeNA戦(バンテリンD)で、根尾が大貫から右中間席へプロ初アーチとなるグランドスラムをたたき込んだ。かつて同僚がやっていたDeNA時代の筒香の柵越え弾を追っかけ、その記念球を拾ったファンをインタビューする企画をふと思い出し、無我夢中、一目散に右翼席へ向かい、幸運なファンを必死に探しインタビューをお願いした。

 結果的に動画はバズり、多くの反響を呼んだ。丁寧な仕事を心がけながらも、時には記者時代に身につけた「ニュースのにおい」をかぎわけ、飛び込んでいくことも忘れない。

 今後の夢もある。まだ漠然としているが、将来はドラゴンズのドキュメンタリーを撮ってみたいそうだ。今季はリーグVを逃したが、近未来に必ず優勝、日本一を達成できると岡田さんは信じている。

 動画のコメント欄やSNSでも話題となり、首脳陣や選手からも「動画見たよ」と、声をかけられるようになった。選手と同じように、裏方のスタッフも熱い気持ちを秘め、いつも戦っている。そんなアニキを、今年の“陰のMVP”に推したい。

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