ドラフト会議が終わった。

 毎年、有望なアマチュア選手を追う身としては、ドラフト会議が終わると虚脱感に襲われる。1年間見守り続けた逸材の晴れやかな門出に涙し、指名漏れに終わった選手の心中を思い胸が詰まる。「他人の人生」と言えばそれまでだ。それでも、「この選手が野球をもっと面白くしてくれるかもしれない」という勝手な願望をドラフト候補に乗せて、発信せずにはいられない。

右肩上がりの選手を多く指名できた巨人

 巨人のドラフト会議の結果について、なんとも微妙な反応がネット上に飛んでいるようだ。

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「今年もクジを外したか……」

「ドラフト1位が『野球太郎』の巻頭名鑑に載っていない」

「可もなく不可もなくというドラフト」

「今年も巨人とソフトバンクの育成チキンレースか……」

 などなど。

 なお、事前に私が巨人のオススメ選手として挙げた森木大智(高知高)、岡留英貴(亜細亜大)の2投手は、何の因果か阪神にドラフト指名(森木が1位、岡留が5位)されている。

 ここで、巨人の支配下でドラフト指名された顔ぶれをおさらいしておこう。

× 隅田知一郎(西日本工業大/投手)
1位 翁田大勢(関西国際大/投手)
2位 山田龍聖(JR東日本/投手)
3位 赤星優志(日本大/投手)
4位 石田隼都(東海大相模高/投手)
5位 岡田悠希(法政大/外野手)
6位 代木大和(明徳義塾高/投手)
7位 花田侑樹(広島新庄高/投手)

 巨人のドラフトを総括するなら、「右肩上がりの選手を多く指名できた」という一言に尽きる。具体的に振り返っていこう。

 即戦力左腕の最右翼だった隅田には4球団の指名が集中し、西武が交渉権を獲得。巨人が1位入札のくじを外したのはこれで6年連続、11連敗。だが、前にも書いたようにその年の目玉から逃げなかった証でもあり、むしろ誇るべきだろう。来年以降も「これは」と思うドラフトの目玉に攻めてほしい。

 とはいえ、外れ1位として翁田(関西国際大)を指名した点については、「ずいぶん攻めたな!」と驚かずにはいられなかった。

巨人ドラフト1位指名 関西国際大・翁田大勢

 翁田についてSNS上では「『野球太郎』の選手名鑑にも載っていない」という野球ファンの感想が散見された。『野球太郎』とはドラフト情報に強い野球専門誌で、私もスタッフに名を連ねている。だが、翁田が巻頭カラーの有望選手名鑑(108名掲載)に載っていないのも当然である。

 翁田は大学2年時より阪神大学野球リーグを代表する速球派スリークオーターとして名前は知られていたが、3年以降はほとんどマウンドに立っていなかった。3年時はコロナ禍による春季リーグ戦中止と、翁田自身の右ヒジ痛で登板機会なし。4年春も右ヒジ疲労骨折の影響で、登板はわずか1試合のみ。それも1アウトも奪えず、4失点という散々な内容だった。この時点で翁田はドラフト戦線から脱落したと見られた。

 また、関西国際大の所属する阪神大学野球連盟は感染症対策のため、緊急事態宣言中の公式戦でスカウトの入場を認めていなかった。つまり、翁田のアピールの場はオープン戦に限定され、緊急事態宣言が解除された後は10月4日の大阪体育大戦の1試合だけ。なお、唯一の公式戦でのお披露目の場となった大阪体育大戦には12球団40人を超えるスカウトが翁田の視察に訪れている。

 結果的に秋の急激なアピールが実ってドラフト上位候補に浮上したものの、9月に発売される野球専門誌では翁田の掲載が間に合わなかったのだ。

 巨人スカウト陣は、翁田を2021年ドラフト候補の右投手のなかで一番の評価をしていたという。サイドハンドに近い角度から最速157キロをマーク。右打者のインコースにシュートしながら食い込む力強いボールは、プロの強打者をも苦しめそうだ。