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《大口病院点滴殺人初公判》“白衣の堕天使”久保木被告の計画殺人の真実「急死させるために使った“ワンショット法”」

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被告の錯乱行動「便器に雑誌を突っ込んで…」

 弁護側によると、事件発覚の半年前にあたる2016年3月、大口病院で患者が死亡した際、久保木被告はその遺族から「この看護婦が殺した」と罵倒された。ショックを受けた久保木被告は、菓子を過食したり、睡眠薬を大量摂取するなどの行動を取るようになったという。

©️文藝春秋

 同年9月に一連の事件が発覚した後は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されている。2018年に逮捕された後、鑑定入院した際には、同じように入院していた患者の耳に洗剤を入れるという問題行動を起こす。その後も便器に雑誌を詰め込んで部屋を水浸しにしたり、「殺してやる」という幻聴により、壁を蹴り続けたり問題行動を続けてきたという。

 しかしながら、初公判で明らかになった久保木被告の犯行は極めて計画的で、弁護側の「心神耗弱状態にあった」という主張とは相容れないものだった。

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 捜査段階で久保木被告はこう語っている。

「自分が担当の日に患者が死んで遺族に説明するのがいやだった」

「20人くらいにやった」

「感覚が麻痺していた」

 検察の冒頭陳述ではその動機の詳細が明かされた。

亡くなった患者家族から受けた罵倒

 検察によると、2008年に別の病院に看護師として就職した久保木被告は、2015年5月に大口病院へ転職。2016年3月に弁護側が主張する患者家族から責められる出来事があり、4月頃には容態が急変して死亡した患者の家族が、医師と担当の看護師を非難している場に居合わせる。そこで担当する終末期病棟の患者が自分の勤務時間に死亡した場合に、同じように責められるのではないかという不安を感じたという。

 そして7月ごろから消毒液「ヂアミトール」を患者に投与予定の点滴袋に混入することを繰り返し始める。この時期に大口病院では多くの患者が不審な急死をとげており、その中には「20人くらいにやった」と話す患者が多く含まれているのだろう。9月1日の夜には同僚の看護師によって、久保木被告がヂアミトールのボトルを隠すように持っていたことが目撃されているという。

 そして9月15日、久保木被告は日勤で午前7時45分ごろ出勤。この日は、1件目の殺人事件の被害者、興津朝江さん(当時78)の担当となった。検察側によると「15日夜か、翌16日に興津さんに投与予定の点滴袋に注射器でヂアミトールを混入した」とした。

 興津さんは16日午前11時頃に容態が急変し、久保木被告の勤務時間外に死亡した。