「文春オンライン」特集班
genre : ニュース, 社会
横浜市神奈川区の旧大口病院4階の終末期病棟。ここで2016年7月以降、約3ヶ月の間に入院していた48人もの患者が相次いで亡くなる異常事態が発生していた。捜査線上に浮かんだのが、当時同院で看護師として働いていた久保木愛弓被告(34)だ。
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捜査が難航し、久保木被告逮捕までには実に1年9ヶ月以上かかった。その間に接触したマスコミ各社に対して、久保木被告は「疑われることに苛立つ」「犯人を許せない」などと主張。しかし逮捕後、点滴に消毒液「ヂアミトール」を混入させて殺害したことを認め、逮捕、起訴された。
「2回目の任意聴取で“完落ち”し、『20人殺った』などと自供してもいる。久保木被告は『自分が担当の日に患者が死んで遺族に説明するのがいやだった』と動機を話した上で『20人くらいにやった』『感覚が麻痺していた』と赤裸々に自供しました。しかしながら捜査当局が罪に問えたのは3人。ひとりでも多くの被害者の殺人罪を認定したかった県警ですが、遺体が火葬され、血液も残っていないと本人がやったと供述しても立件はできません」(全国紙事件担当記者)
世間を震撼させた「大口病院点滴殺人事件」は、事件発生から5年の時を経て、ついに今年10月1日に横浜地裁で初公判が行われる予定だ。
久保木容疑者が点滴にヂアミトールを混入させて殺害したと認定された3人は、八巻信雄さん(当時88)、西川惣蔵さん(当時88)、興津朝江さん(当時78)。このうち、西川さんの妻が、現在の心境を文春オンライン取材班に明かしてくれた。
事件発生当時、西川さんが中毒死だったことが判明すると、妻・享子さんは弁護士を通じて以下のコメントを発表した。
《とにかく悲しいです。病死であればあきらめもつきますが、殺されたとなると、病院を選んだ私の判断が悪かったのか……とも悔やまれてなりません。最後に夫が苦しんでいた様子も思い出されます。なぜ夫が死ななければならなかったのか、真相が明らかになることを望んでいます》
2016年8月、西川さんは自宅で倒れ、別の救急病院から紹介された大口病院に同年9月13日に入院した。異変が起きたのは入院してわずか3日後の9月16日。病院から「容態が急変した」と連絡があり、同月18日に死亡。病死だと一度は受け入れたが、その後、点滴にヂアミトールが混入していたことが分かり、中毒死だと発覚した。
フリーライター
声優・作家・書評家・エッセイスト
ライター