一種の「巨大な暴力装置」として、少数民族への弾圧を強める中国に対して、欧米各国は非難の声を上げ始めた。一方で、日本は「見て見ぬふり」とも言える慎重な態度を取り続けている。在日ウイグル人の目には、漢民族の思想や日本の責任がどう映っているのだろうか。

 ここでは、日本ウイグル協会会長の于田ケリム氏、南モンゴル・オルドス高原生まれで静岡大学人文社会科学部教授を務める楊海英氏による『ジェノサイド国家中国の真実』(文藝春秋)の一部を抜粋。新疆ウイグル自治区で生まれ、日本ウイグル協会副会長を務めるハリマト・ローズ氏を交えて行った鼎談のもようを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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弾圧は「一部の過激派」だけの責任ではない

 現在のウイグル人弾圧は、文化大革命期に内モンゴルで行なわれていたことと同じです。時代が違うだけで、やり方は同じなんです。私が『墓標なき草原──内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録』などで書いたことについて、読者から「こんなこと、本当にあったんですか?」と驚かれますが、いずれも、本人が実名で名誉回復を政府に陳情した時の報告書に書かれていたことです。

 文化大革命が終わってから、中国政府も「あれは間違いでした。一部の過激な人間がやったことです」と否定しました。しかし調査研究で当時のモンゴル人に話を聞くと、関わっていたのは「一部の過激な人間」だけではありません。文化大革命でのモンゴル人の粛清や虐殺には、共産党幹部、人民解放軍、漢民族の労働者や農民が動員されていました。

 とにかく中国は、一種の「巨大な暴力装置」になっています。文革中だけでなく、今もそうです。内部に対しても、外部に対しても、「中国」という存在自体が常に「暴力」の形を取って現れています。

 例えば、ウイグル人が酷い目に遭っていても、漢民族で「ちょっとやりすぎだよ」「やめるべきだ」と諫める人がいない。文革中にモンゴル人が大量虐殺に遭っていた時も、正義感のある漢民族の人が出てきて「やめろ」と言った事例は残念ながら見当たりません。だから虐殺が10年も続いてしまったんです。