昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

子供の名前を自由に付けられない、家の中でもウイグル語は禁止…中国政府による“ウイグル人弾圧”のヤバい実情

『ジェノサイド国家中国の真実』より #1

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, 読書, 歴史

 いまだ解決の糸口が見えない、中国による新疆ウイグル自治区でのウイグル人への弾圧問題。国際社会で問題視され始めたが、習近平政権が推し進める「ウイグル人根絶」政策の実態をまだ知らない方も多いだろう。

 ここでは、日本ウイグル協会会長の于田ケリム氏、南モンゴル・オルドス高原生まれで静岡大学人文社会科学部教授を務める楊海英氏による『ジェノサイド国家中国の真実』(文藝春秋)の一部を抜粋。にわかには信じがたい弾圧の実情を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

©iStock.com

◆◆◆

弾圧者も弾圧される

于田 ウイグルでの弾圧がさらに厳しくなった一つのきっかけは、チベット自治区共産党書記としてチベット人弾圧で「成果」を上げた陳全国が、2016年に「新疆ウイグル自治区」の党書記に就任したことがあります。

 彼がまず行なったのは、ホータン地区の党・政府責任者97名を免職処分にすることで、処分対象のほとんどはウイグル人でした。「タバコを吸ったこと」が理由ならまだしも、「宗教指導者の前でタバコを吸うことを躊躇った」として懲戒免職された人もいます。

 宗教的規範を守っているとして、処分の対象になったわけですね。

于田 ウイグルでは、公安関係者も弾圧の恐怖に晒されています。ホータン、カシュガル、ウルムチなどの公安局幹部が次々に拘束されました。とくにウルムチ市公安局のカディル・メメット元副局長とジュレット・イブラヒム前副局長などは、ウイグル人を冷酷に弾圧する側の人物として知られていたのに、2019年に相次いで拘束されました。詳細は不明ですが、強制収容所の内情などを知り過ぎていたからだろうとも言われています。

 もともと「新疆ウイグル自治区」と言っても、形式的に自治区主席がウイグル人というだけで、党書記を始め自治区幹部の多くは漢民族です。

 その主席にしても、「両面人」のウイグル人が共産党に指名されるわけです。

于田 ですから、トップと言っても、発言内容は党が決めるので、発言権などありません。

 モンゴルも同じです。自治区レベルだけではなく、下級単位の自治州、自治県、自治郷に至るまで、「党委員会書記」は、必ず漢民族です。地方政府機関では、「正職」は漢民族、「副職」は少数民族に決まっています。稀に漢民族の副部長や副課長がいると、「お前、少数民族か」と冗談を言われる。それぐらい徹底しています。

于田 私が大学にいたときは、珍しく大学院の党書記がウイグル人でしたが、一見、漢民族の大学院長より地位が高いように見えても、実際は、ウイグル人の方が地位が低く、自分では何も決めることができませんでした。