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《在日ウイグル人の吐露》「ジェノサイドを見過ごした漢民族も日本企業も共犯者」“ウイグル人弾圧”を見て見ぬふりする日本に抱く思い

『ジェノサイド国家中国の真実』より #2

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際, 読書, 歴史

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ローズ ウイグル人が強制収容所に入れられていることは、新疆にいる漢民族の中国人全員が分かっています。しかし、それに反対する漢民族の話は聞いたことがありません。

 例えば、新疆北部のタルバガタイは、もともと漢民族とウイグル人が共存していて、大きな揉め事もない町でした。それほど格差もなく一緒に暮らしていたのに、いまは漢民族とウイグル人が別々に暮らすようになりました。2013年に訪れた際には、どこへ行っても警備のポスターが貼られ、警察車両がずっと巡回していて、異様な雰囲気でした。

 私が2013年に新疆を訪れた時も、ウルムチで最も洗練されたマンション地区に住んでいるのは漢民族で、夕方になると、漢民族は上等な地区へ帰り、ウイグル人は、日干し煉瓦の旧市街地区へ帰っていて、完全に「住み分け」をしていました。「あの地区はウイグル人のテロリストの巣窟だ。あそこに行ったらウイグル人に襲われる。危ない地区だ」と分離を煽って、「ゲットー」をつくっているんです。

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于田 考えてみると、ウイグル人学校と漢民族学校は、建物からしてまったく違っていました。2004年に南新疆の町へ行った時も、漢民族学校の建物の立派さに驚いたことがあります。

学校と家庭の双方で行なわれる「中華思想的な教育」

 漢民族の人は、エリートかどうかに関係なく、常に政府と一緒になる傾向があります。ウイグルやモンゴルに来た字も読めないような漢民族でも、知識人と同様に「ウイグル人は野蛮だ。モンゴル人は遅れている」と言います。

 学校で「ウイグル人やモンゴル人は野蛮で遅れている」と教えているし、家庭でも同じような会話をしているのでしょう。漢民族の「中華思想的な教育」は、学校と家庭の双方で行なわれています。

 2020年に、内モンゴルでモンゴル語教育の廃止に向けた政策が始まった時も、漢民族の人たちは、「今の時代、モンゴル語を話してどうするんだ」とか「モンゴル語は遅れた少数者の言語で、近代化に不向きだ」と平気で言うんです。

「では、あんた、明日から日本語を話しなよ。日本はあんた方より科学技術が進んでいるんだから」と言い返すと、「それは嫌だ」と。

 東京でモンゴル人がデモをしても、漢民族の中国人がすれ違いざまに、「何を時代錯誤的なことをやってるんだ」と言う。

 100万人以上のウイグル人が強制収容所に入れられても、「それは間違っている」と言い出す漢民族はほぼいない。海外にいる漢民族もほとんど発言していません。

ローズ 現在、欧米各国が「中国のウイグル弾圧はジェノサイドだ」と批判し始めましたが、やがてすべての歴史が明らかにされた時、「陳全国のせいだ」「中国共産党のせいだ」「習近平のせいだ」では済まされません。「ジェノサイドに反対せず、黙って見過ごした漢民族も共犯者だ」ということになると思います。