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「私は学校も許せません」男性コーチにわいせつ行為を受けた野球部員の保護者が怒った異例の“授業料催促”《大阪偕星学園高校》

「私は学校も許せません」男性コーチにわいせつ行為を受けた野球部員の保護者が怒った異例の“授業料催促”《大阪偕星学園高校》

2021/10/17
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「私は水落同様、学校も許せません」

 さらに追い打ちをかけるように、水落から最も卑劣な被害を受けていたA君の父親は学校から驚きの連絡を受けた。A君は事件発覚後から学校に通えない日々が続いていたが、2年生に上がるタイミングで授業料の催促を受けたという。

「新年度の1回目の授業料をお支払いいただけますか」

 大阪偕星学園では年間の授業料を3回にわけて納める形式だが、A君は学校に通えなくなり、転校も視野に入れていた。A君の父親は怒気まじりにこう話した。

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「担任は野球部の部長でもあったので、事情もわかっているはず。それなのに授業料を催促してくるのかと驚きました。しかも『お支払いできません』と伝えたら、『水落から賠償金が入ったらそれで支払ってください』というんです。まるで、早く水落と和解しろといわんばかりの物言いに怒りを感じました。私は水落同様、学校も許せません」

野球部で「本部」と呼ばれていた建物

 改めて、学校に問い合わせると、教頭は事実と認めてこう説明した。

「転学をするにしても、納付期限が過ぎている授業料は納めていただく決まりになっているんです。不幸なことに、水落のわいせつ行為によってPTSDになられたわけですから、水落の賠償金から授業料に充当するのは適当だと思いますし、お支払いいただくのも水落から賠償金が支払われるまでお待ちします。学校としては、むしろ被害者に寄り添った判断だというふうに考えています」

 事件発覚後、大阪偕星学園は硬式野球部に携わっていた関係者をそっくり入れ替えた。山本監督は辞任し、岡山の倉敷高校に移った。部長や寮監らは役職を外れ、外部コーチとも契約を更新しなかった。

校内の練習試合で投げる水落

 新監督には第三者委員会にも参加していた野球部のOBが就任し、コーチは新たに採用。乱れていた寮の風紀を取り戻すべく、食事を一新し、窃盗を防ぐために鍵付きの個人ロッカーを設置するなど、改革にも取りかかった。

 しかし、体制変更を学校が公にしたのは今年4月で、入学した新1年生に対しては入学式まで伝えていなかったという。山本監督のもとで甲子園を目指そうと大阪偕星学園に進学した生徒と保護者は驚きとともに学校に不信感を抱き、8人の生徒が入学式後に山本監督が就任した倉敷高校へ転学した。

「監督の依願退職を受理したのが3月ですから、どうしても遅くなってしまった。報告が遅れたことはこちらに非がありますが、監督が代わったことで転学された方の入学金や授業料、入部にあたってそろえなければならない道具の費用など、すべてお返ししました。むしろ、学校も被害者なんです」(教頭)

 転学した新入生には手厚く対処する一方で、水落から最も酷いわいせつ行為を受けたA君家族には授業料の催促をする。こうした対応の違いにより、いっそうA君の父親らは怒りを覚えている。