「今は命令口調なんか受け入れられないわよ」と言ってみたところで、夫にしてみれば、昔からこれでやってきたじゃないか、どうして今さらダメなんだと、ギョッとするか、あるいは「命令口調なんかで話しているつもりはないぞ」と戸惑うかもしれません。ですから、それとなく観測気球を上げてみませんか。
「今の学校は、小学1年生からお互いに『さんづけ』『ですます』で話すように教えられるんですって」「お互いに敬語で話す夫婦っていいわね」などと話してみて、様子をうかがうのです。果たして夫は「だったらウチもそうするか」となるか、「オレはそういうのは馴染まないぞっ」となるか。しばらく観察を続けてみましょう。
あなたはこれからも夫と折り合いをつけてやっていきたいと思っているのですね。もしかしたら夫には今まで、命令口調でなければいけなかったという事情もあったのかもしれません。理系の強みを活かして、その辺りのこともぜひ観察してみてください。静かに二人で過ごすというより、夫を観察対象にして遊ぶようなつもりで。
ところで、社会は変化したとはいえ、ジェンダーギャップの解消には、もうしばらくかかるでしょうね。男女間の賃金格差は縮小しつつあるとはいえ、日本の女性の賃金水準は、まだ男性の約74.4%(2020年)です。G7のなかでは最も格差が大きいんですね。
アメリカでは今回女性初の副大統領となったカマラ・ハリスと、2007年に女性初の下院議長となったナンシー・ペロシが並んで立ち、女性2人が並ぶのは史上初だと騒いでいます。進んでいるように見えるかもしれませんが、副大統領も下院議長も、いつも男性の大統領の後ろに控えています。あくまでも補佐役なんです。まだ女性が大統領になったわけではないのに、ドヤ顔しているのはいかがなものでしょうか。
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text:Atsuko Komine
【週刊文春WOMAN 目次】小室佳代さん密着取材一年 小誌記者に語った息子の子育て、金銭トラブル、眞子さまへの尊敬/特集ジェンダー&フェミニズム/香取慎吾表紙画第10弾
2021年 夏号
2021年6月22日 発売
定価550円(税込)