文春オンライン

毎日6000人が来店、買わないのに商品触りまくり……どうすれば感染が怖くなくなる?――中野信子の人生相談

あなたのお悩み、脳が解決できるかも?

2020/07/26
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 緊急事態宣言下の4月22日~5月4日に、「文春オンライン」にて、みなさまのコロナ禍のお悩みを募集しました。お寄せいただいた中から全7つのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします(全7回中3回/4回目を読む/5回目以降は後日公開予定)。

中野信子さん ©文藝春秋

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Q 毎日6000人がやってくる──31歳・シングル・販売員からの相談

 私が勤める家具・雑貨店には外出を自粛しない人たちが毎日6000人ほど来店します。販売員としてこんなことを言うのも何ですが、なくても生きていけるものをなぜ今、買いに来るのか。密集、飛沫を飛ばしておしゃべり、買わないのに商品触りまくり……。私は感染が怖くて毎日震えています。この恐怖に打ち克つ方法はありますか。

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発売中の『週刊文春WOMAN vol.6 (2020夏号) 』に掲載

A 販売員としては笑顔で対応しなければならない、その裏で、ストレスが溜まっていきますよね。営業中の飲食店、コンビニ、交通機関の方など、お客様を相手にされているみなさんに共通するお悩みでしょう。

 まず、メンタル以上に大事なことは、物理的に危険を防げるところは防がなければならないということです。あなたの安全は守られているでしょうか、そのことはとても心配です。マスクをされているとは思いますが、さらにフェイスシールドやゴーグルも、場合によっては雇用主に依頼されたほうがいいかもしれません。

 感染予防に手洗いが効果的であることは言うまでもありませんが、これを最初に唱えたのは19世紀のハンガリーの医師センメルヴェイスでした。かつて妊婦さんが産褥熱で死ぬことが多かった時代、彼は診療従事者たちが手洗いをすることで産褥熱を防ぐことができると実証しました。

 今では「公衆衛生の父」と呼ばれ、ブダペストに像が建っていますが、当時の医学界は彼の研究をばかにして、彼は「石鹸屋の回し者」とまで言われたのです。医師の職を奪われ、失意のうちにも手洗いを訴え続けた彼は、ついに精神療養所に幽閉されてしまいました。そこで有名医師の部下たちのリンチに遭い、その傷がもとで牢死したのです。