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 上書きしていくことによって、イジメた人やそれを傍観していた人を許そうと思わなくていいんです。絶対に許せないけれども、人間ってこういう側面があるんだなとか、傍観していた人は自分が巻き込まれたくなかっただけなんだなとか、23歳のあなただから気づくことがあると思います。

 できれば、「許せない!」「どうして助けてくれなかったの?」と言語化すると効果的なので、誰かに聞いてもらえるといいですね。もちろん、プロのカウンセラーの助けを借りてもいいと思います。本当に辛かったなと思い出してアウトプットすると、意味づけが変わっていくので、できる範囲で少しずつやれるといいですね。

 せっかく忘れていたのに、同級生の顔を見てフラッシュバックが起こった。記憶というのは、記銘されるとけっこう保持されているものなんです。ただ、呼び出さないでいると、どんどん奥のほうにいってしまう。滅多なことでは戻ってこないのですが、それが呼び出されてしまったということは、解決しなければいけない何かがあるのだと解釈することもできます。

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 今、どうしても当時のことが頭に浮かんでしまうというのは、その記憶も書き換わりたい、書き換えてほしいわけです。意味づけを変えていくことによって、自分がもっと生きやすくなりたいということなんです。18歳のときには抵抗もできなかったけれど、今なら言い返せるとか、18歳の自分とは違うということを少しでもつかめると、それはあなたの自信になりますよ。

 職場に行けなくなってしまうほどのトラウマだけれど、休むというアクションがとれてよかったですね。ちゃんと自分の状態を知って、自分は今耐えられない状態なんだという判断ができた。べつに、立ち向かわなくてもいいじゃないですか。休むという適切な処置がとれたということは、あなたは一歩前進したということです。

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※最新回は発売中の「週刊文春WOMAN 2021年 秋号」に掲載中です。

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text:Atsuko Komine