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イジメられていた頃の同級生に再会、フラッシュバックが止まりません――中野信子の人生相談

あなたのお悩み、脳が解決できるかも?

2021/11/04

 みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えします。

中野信子さん ©文藝春秋

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Q イジメられていた光景がフラッシュバックする─23歳・シングル・休職中の女性からの相談

 ある理由で休職しています。それは、18歳のとき警察沙汰になるほどのイジメに遭い、不登校になったトラウマがフラッシュバックして、何も手につかなくなったからです。きっかけは、私の職場に営業としてやってきた人が、そのときの同級生だったからです。私を直接イジメた人ではないけど、当時の事情を知る人と再会したことで、一気に心が折れてしまいました。

 それ以来、毎日毎日イジメられていたときの光景が頭に浮かび、とても辛いです。トラウマはどうやって克服すればいいですか?

中野信子の回答

A 警察沙汰になるなんて、いったいあなたに何が起こったのだろうかと胸が痛くなります。イジメる側は多くの場合、ドーパミンが分泌されてイジメることが快感になっています。これは理性によって止めることがなかなかできない。そしておそらく、今ではイジメたことを忘れている。でもあなたは今も、思い出すと本当に辛いですよね。

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 過去の事実を書き換えることは難しいのですが、記憶というのはかなり書き換わるものなんです。記憶は「記銘」「保持」「想起」の3つのプロセスから成っています。これを「記憶の三段階」といいます。「記銘」は未知のものを覚えるというプロセス、その次の「保持」はそれがなるべく劣化しないように保存しておくプロセス、「想起」はそれを取り出して持ってくる、つまり思い出すことです。

 この「記銘」「保持」「想起」を繰り返していると、だんだん、その記憶の意味づけが変わってくることがあります。あなたは今、18歳の頃の辛い光景が想起されてしまった。でも、少しでもその辛さが弱まる瞬間がありませんか。深呼吸するとリラックスするとか、お風呂に入っているときは大丈夫とか、ミルクティを飲みながらだったら少し落ち着くとか、ありませんか。

 そんなときを選んで、実はあのときはこうやって言い返したかったんだとか、あの人のことは今でも鬼畜だと思っているとか、18歳の自分ではなく23歳の自分はどう思うかということを少しずつ上書きしていくのです。