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「50人の組員がいれば50票は入る。家族や知人も合わせれば、数百票と増えていく」 “実弾”飛び交う選挙戦でヤクザが強い「当然の理由」《10.31衆院選投開票》

「ヤクザと選挙」の事件簿 #1

2021/10/23
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過去には選挙で暴力団幹部が逮捕のケースも…

 そんな風に国と地方を問わず、選挙をめぐっては暴力団を介して「実弾が飛び交う」やり取りが行われることがある。この場合の実弾とは、暴力団の対立抗争事件などで使われる銃弾の意味ではなく、「現金」のことを指す。例えば前述の河井陣営は、暴力団こそ介在していないものの、参院選で約2900万円の“実弾”を飛ばしたと報じられている。

 同様の公職選挙法違反容疑で指定暴力団・住吉会の最高幹部が摘発されたことがあった。2015年4月に行われた千葉県議選の告示前の3月、幹部はある候補者を当選させるため飲食店で会合を開き、有権者13人に飲食の接待をして投票や票のとりまとめを依頼したとして、同年の6月に逮捕された。

 事件摘発後、住吉会最高幹部らが支援していたとされた県議は釈明に追われた。

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 記者会見を開き、「(選挙で)反社会的勢力から支援を受けたことはない」と強調。飲食店での会合に出席したことは認めたが、「同窓会と聞いていた。選挙違反に加担した覚えはない」と訴えた。さらに、「選挙関連の会合とは思わず、会食の主催者や金銭負担がどうなっていたか、票のとりまとめが行われたことなどは知らなかった」と主張。会合での最初のあいさつの後で、暴力団幹部が出席していたことに気付いて、「まずいなと思った」と語った。

 千葉地裁はこの年の8月、公職選挙法違反の罪で住吉会最高幹部に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決では有権者13人への投票依頼と、その報酬として1人当たり約4000円相当の酒食の接待をしたとの事実関係を認定した。

 判決理由では、「立候補予定者が会合に参加することを明確に認識した上で、会合費を全額負担した。少なくとも現場での共謀があり、明確な故意があった」と指摘。幹部は事件となった会合について「同窓会のつもりだった」と述べるにとどまり、県議への票の取りまとめの意図まで明らかになることはなかった。