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急変させるために選んだ“注射器ワンショット殺人”

 その2日後、9月18日の久保木被告は夜勤だった。午後3時ごろ出勤し、西川惣蔵さん(当時88)の担当になった。西川さんの容態が良くなかったことから、「日勤の看護師が残っている間に西川さんを死亡させれば、日勤の看護師が家族に説明してくれる」と考え、投与中だった点滴に直接、注射器でヂアミトールを混入させ同日午後4時55分頃には心肺停止、死亡させた。家族への連絡などは日勤の看護師が残って対応したという。

 ちなみに、投与中の点滴の管に直接、注射器で薬剤を投与することは「ワンショット」と呼ばれる。興津さんのように事前に点滴袋にヂアミトールを混入させるより、ヂアミトールが一気に体内に入るため、西川さんはより早く死に至ったようだ。

点滴の管に注射器で投与 ※写真はイメージです ©iStock.com

 さらにこの日は、翌19~20日に八巻信雄さん(当時88)ほか4人に投与予定の点滴袋にヂアミトールを混入させた。八巻さんは19日午前、ヂアミトールが混入した点滴を投与され、夜勤明けの久保木被告の勤務終了後に容態が急変して死亡した。

 興津さんと八巻さんの場合は、自分がいないときに投与される点滴袋に事前にヂアミトールを混入。西川さんは間もなく帰ってしまう日勤の看護師の勤務中に容態を急変させる必要があったため、投与中の点滴に直接、ヂアミトールを混入させた。

久保木愛弓被告の自宅の家宅捜索に向かう捜査員ら ©️共同通信社

 検察側の冒頭陳述では、久保木被告が担当する患者が目論見通り、別の看護師が責任をおうべきタイミングで容態が急変していたことが明らかになった。いまの段階では、彼女は明確な殺意と計画性をもって次々に患者を殺害したようにみえる。傍からは心神耗弱状態にあったとは思えないが、そうでないならこれほどの大量殺人を行った心理状態とは、どのようなものなのだろうか。

 検察側が冒頭陳述を続ける間、久保木被告はほとんど姿勢を変えずに冒頭陳述が記載された用紙に目を向け続けた。弁護人とは時折会話を交わし、丁寧に頭を下げたりする様子が見られた。

【後編を読む】

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