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【死刑求刑】《大口病院点滴殺人》“白衣の堕天使”久保木被告の計画殺人の真実「急死させるために使った“ワンショット法”」

genre : ニュース, 社会

 2016年7月以降、入院していた48人の患者が亡くなった横浜市神奈川区の旧大口病院。そのうち3人の殺人罪に問われている、元看護士の久保木愛弓(あゆみ)被告(34)の論告求刑公判が10月22日に横浜地裁で開かれ、検察が死刑を求刑した。

 久保木被告は最終陳述で「死んで償いたいと思っています」と謝罪を口にしている。被告による犯行を詳報した記事を再公開する。

(肩書き、年齢等は当時のまま)

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 白のブラウスにグレーのジャケットとスカート姿。化粧っ気は全く無く、おしゃれと言うには程遠い縁の薄い眼鏡。結んでいた伸びきった髪は、下ろせば腰の位置ほどまで届きそうだ。法廷に現れた女性は一見どこにでもいる目立たないタイプなだけに、問われている罪とのギャップに恐怖心が煽られる。

©️文藝春秋

 2016年9月に発覚した、横浜市神奈川区の旧大口病院での「点滴殺人事件」。同年7月以降、4階の終末期病棟では入院していた48人もの患者が相次いで亡くなる異常事態となっていた。このうち3人に対する殺人などの罪に問われたのが元看護師、久保木愛弓被告(34)だ。事件から5年を経た10月1日、横浜地裁で初公判が開かれた。(全2回の2回め/後編を読む

「事実自体は争わないが、責任能力について争う」

 この日は台風が迫り、朝から雨風が強まっていた。しかしさらなる大量殺人事件へと発展してもおかしくなかった、戦後の事件史にも残る裁判を一目見ようと、多くの傍聴希望者が集まった。

久保木愛弓 ©️共同通信社

 午前11時過ぎ、法廷に現れた冒頭の姿の久保木被告にほとんど表情はなく、淡々と腰縄や手錠を外されていた。証言台に立ち、裁判長の人定質問に、小さな声で「久保木愛弓です」と答えた。

 検察官により、罪に問われた3件の殺人と、別の患者らに投与予定の点滴袋に消毒液を混入させた殺人予備罪についての起訴状が朗読される。裁判長が「何か違うことがありますか」と尋ねると、久保木被告は「すべて間違いありません」と小さな声ではっきりと発言した。

 弁護側は「事実自体は争わないが責任能力について争う」とした上で、「久保木被告は統合失調症による心神耗弱状態にあった」と主張した。認められるケースは少ないが、心神耗弱となれば、大幅に減刑されることになる。