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連載池上さんに聞いてみた。

「恒大集団」経営危機で習近平主席が陥る“ジレンマ”とは?

「恒大集団」経営危機で習近平主席が陥る“ジレンマ”とは?

池上さんに聞いてみた。

2021/10/27
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Q 世界市場に影響も……中国の「恒大集団」ってどんな会社? 

 中国の不動産大手「中国恒大集団」の経営危機がにわかに注目を浴びています。9月20日には同社のデフォルト(債務不履行)懸念を受けて株価が急落し、世界でも同時に株安になるなどの影響がありました。この中国恒大集団とはどういう企業なのでしょうか。また、かつてのリーマンショックのように、世界各地に影響を及ぼすようなことはこれから起こってしまうのでしょうか。(30代・男性・会社員)

©AFLO

A 貧しい農村出身者が一代で築いたというチャイナ・ドリームの典型です

 深圳に本社のある巨大不動産会社「中国恒大集団(グループ)」は、「恒大」という名称でも大学ではありません。「恒に大きくなろう」という意味が込められています。その名の通り、大きくなろうという野心が強すぎで挫折してしまったようです。

 この巨大企業は、2016年には売上高で世界最大の不動産企業に上り詰めたこともあります。現在も不動産販売面積で中国2位。去年の売上高は日本円で約8兆5000億円にも上っています。電気自動車事業にも乗り出し、強豪のサッカークラブ「広州恒大」(現広州FC)も所有しています。全従業員は20万人に上ります。

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 この企業は、貧しい農村出身者が一代で築いたというチャイナ・ドリームの典型です。立志伝中の人物、それが許家印会長です。中国富豪者ランキングで10位です。

許家印会長 ©AFLO

 許氏は1996年に中国恒大を創業しました。当初は低価格の小型マンションの建設・販売でしたが、中国の不動産ブームに乗って大躍進しました。

 いち早くマンションを購入した人は、瞬く間に財産を築き、ブームに乗り遅れた人との格差が拡大しました。こうなると、庶民の不満が高まります。

 そこで中国政府は、格差をなくすためには、不動産投資で金儲けができなくしようと考えます。打ち出した方針が、不動産業界が金融機関から借りられる金額の規制です。消費者のマンション購入も規制を受けるようになりました。

 その結果、不動産が売れなくなり、不動産会社の資金繰りは急激に悪化。中国恒大の建設中のマンションは次々に建設がストップしたというわけです。

 ただし、いまのところ問題は中国国内に留まっているので、世界経済への影響は軽微ではないかと見られています。

 ここでジレンマに陥っているのが習近平主席です。中国恒大が経営破綻したら、中国国内の金融機関が不良債権を抱え込むことになり、中国経済への打撃になります。でも中国恒大を救済したら、「金持ちは助けるのか」という不満が爆発するでしょう。格差是正のために社会を安定させるのは難しいのです。

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